研究課題/領域番号 |
23K04775
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀内 新之介 東京大学, 大学院総合文化研究科, 講師 (50755915)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 複合体結晶 / 結晶構造解析 / 光物性 / 金属錯体 / 分子間相互作用 / 水素結合 |
研究実績の概要 |
本年度は,金属錯体と有機ホストを分子間相互作用によって複合体化させた超分子結晶を合成し,その特異な集合構造と機能創出を行った。はじめに嵩高い置換基をもつカチオン性Ir錯体と有機ホストからなる細孔性結晶のナノ細孔を用いて,その細孔内部に位置する水分子の動的な性質や特異な集合構造を明らかにした。また,サイズの小さなIr錯体を用いた場合でも超分子結晶が得られることを明らかにした。得られた超分子結晶の光物性をIr錯体単独の単結晶のものと比較したところ,有機ホストと複合体化することでIr錯体の光物性は大きく変化することが分かった。結晶構造解析によってIr錯体周りの集合状態を比較すると,有機ホストがIr錯体の配位子を覆うような集合構造を形成することで錯体の対アニオンである塩化物イオンが大きく引き離され,錯体-アニオン間の相互作用が小さくなっていることが分かった。錯体-アニオン間の相互作用が小さいヘキサフルオロリン酸イオンをアニオンにもつIr錯体の光物性を測定したところ,超分子結晶の光物性と近い値が得られた。この結果は,通常溶液中では無視される錯体-アニオン間の相互作用だが,分子が密に集合した結晶状態では錯体の光物性に大きく影響を与えることを意味している。複合体結晶の構造と光物性を明らかにすることで,これまで議論が難しかった錯体-アニオン間の相互作用と光物性への影響を明確化できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では既存の超分子結晶を用いた研究の進展に加え,新たな超分子結晶を合成できた。そして,その集合構造と光物性の関係を明らかにすることで,これまででは明らかにされていなかった分子間相互作用と光物性の関係性を明確にできた。これらの結果は,本研究課題で扱う超分子結晶の学理的な意義を示すものである。したかって現在までの進捗状況を総合的に判断すると,概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は概ね順調に進展しているため当初の計画に従って研究を進めていく。また,得られた成果を論文化するため参照化合物の合成や分光測定を行いデータを揃えていく。これらと並行して引き続き,新たな超分子結晶の合成とその機能解明を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費や旅費等の経費が想定よりも少なく済んだため,次年度へ繰り越すことにした。次年度では,次年度使用額と合わせて,各種消耗品や備品の大量購入を行う予定である。研究上必要となった場合は,高額備品購入への購入費用の一部にも充てる。
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