研究課題/領域番号 |
23K04777
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡村 高明 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (90252569)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 疎水空間 / 金属酵素モデル / 活性制御 / モリブデン / チオラート |
研究実績の概要 |
本研究では、モリブデン酵素の1種であるキサンチン酸化酵素(XO)や亜硫酸酸化酵素(SO)など活性中心近傍のアミノ酸残基が活性に必須となる金属酵素に着目しモデル錯体の研究を行う。酵素活性部位を錯体化学的に再現するという従来の方法に加えて基質認識部位や酸塩基触媒となるアミノ酸残基側鎖(活性制御官能基と呼ぶ)を疎水空間に内包した新世代の金属酵素モデルを創製し、従来のモデル錯体では達成できなかった難反応性基質の触媒反応を行うことを目的とする。嵩高い疎水基と非極性溶媒により形成される疎水空間は水素結合など弱い相互作用を保持するとともに分子間反応を抑制することで反応中間体を安定化する。本年度は疎水空間を内包した新世代の金属酵素モデル創製の基礎データの収集を目的として様々な非常に嵩高く疎水的なアシルアミノ基を持つアレーンチオラートコバルト錯体を合成し、立体障害が配位構造に与える影響を系統的に調べた。置換基の嵩高さの増加によりチオラートの配位数は4から3,2へと減少し、2の場合は2つアミド基の酸素も配位した歪んだ正四面体構造となった。最も嵩高い場合は配位子が1つのみ配位した他に類の無い特異な錯体を得た。また、非対称に2つのアシルアミノ基を導入したアレーンチオラート配位子の場合、嵩高さの増加により3つの構造異性体の内の1つが溶液中で優先的に生成することが明らかになった。また、金属中心周りの嵩高さについて配位子の占有率を可視化することで定量的な議論に成功した。SO、XOモデル錯体として両側に従来のものより嵩高いアシルアミノ基を持つ対称アレーンジチオラート配位子を新たに合成し、モリブデン錯体を形成させることで予備的な知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
非常に嵩高いアシルアミノ基を持つ対称アレーンジチオラート配位子は従来の方法を改良することにより合成可能となったが、反応が極めて遅く予期せぬ副反応を伴い分離精製を困難にして収率の低下を招いた。収率が低いながら配位子は合成できたが、モリブデン錯体の形成が著しく困難となり断念せざるを得なかった。しかし嵩高さを軽減することで目的の錯体を得る事に成功した。これらの条件検討に長時間を要したことに加え、当初予定していた研究協力者の減少により目標の予定より遅れる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた対称アレーンジチオラートモリブデン錯体の合成が困難であったことから一旦これを中断し、本来の目的である非対称なアレーンジチオラートの合成を進める。具体的には3,6-ジアミノベンゼン-1,2-ジチオラートの片方のアミノ基のみを非常に嵩高いアシルクロリドを用いてアシル化し、残りのアミノ基を別の比較的小さいアシルクロリドでアシル化することで非対称アレーンジチオラート配位子を得、これを用いてモリブデン錯体を合成する。まず、ピバロイル基のような簡単なアシル基を用いて合成条件の検討を行い基礎データを収集する。次に当初の計画に従いカルボキシ基、チオール基やグアニジノ基などの官能基を有するオリゴペプチドを結合させてXO、SOモデル錯体のための配位子を完成させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬や器具は既存のものや他の研究費と共通で使用するものがあったことに加え、研究計画の遅れにより機器の更新や高額な試薬の購入に至らなかった。次年度は、本年度に予定していた老朽化した機器の更新を行い、研究の進展により高額な試薬・器具の購入に使用する。
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