研究課題/領域番号 |
23K04791
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
松本 歩 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (30781322)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | レーザー誘起ブレークダウン分光 / レーザーアブレーション / 金属援用エッチング / ポーラスシリコン / 金ナノ粒子 / 液体分析 / 微量分析 / スピンコーティング |
研究実績の概要 |
微量液体の現場分析技術として表面増強レーザー誘起ブレークダウン分光(表面増強LIBS)が期待されている。これまでに、金属援用エッチングにより作製したポーラスシリコン(ポーラスSi)をLIBSの基板として利用することで、蒸発乾固試料の信号強度を増大させることに成功した。しかし、試料溶液の濃度が高くなると基板上に多量の蒸発乾固物が析出し、定量分析の精度が低下する。本研究では、高濃度溶液中の元素を定量するための試料作製方法を検討した。 目的元素(ストロンチウム: Sr)の濃度が一定で目的外物質(塩化ナトリウム: NaCl)の濃度が異なる試料溶液をポーラスSi上に滴下し、蒸発乾固またはスピンコーティング後にレーザーを照射して分析を行った。蒸発乾固法では、NaCl濃度が高くなるとSrの発光線強度が低下するとともにレーザー照射位置によるばらつきが大きくなった。スピンコーティング法では、蒸発乾固法と比べてSrの発光線強度が低下したものの、NaCl濃度による強度変化や照射位置によるばらつきが抑制された。しかし、NaCl濃度が充分に高くなると、Srの強度が高くなることわかった。次に、ポーラスSi上に滴下した試料溶液を紙ワイパーで拭き取った後、レーザーを照射すると、目的元素の発光線が観測された。拭き取り後もポーラスSiの孔内に液が残存していると考えられる。このように、表面増強LIBSにおける新たな試料作製方法の可能性を示した。 現場分析を想定した光ファイバー伝送系により、平滑Si、ポーラスSi、金ナノ粒子担持ポーラスSiにレーザーを照射し、発光スペクトルを測定した。このとき、Siの発光線強度は、金ナノ粒子担持ポーラスSi>ポーラスSi>平滑Siの関係にあった。この結果は、ポーラス構造や孔内に存在する金ナノ粒子が信号強度の増大に寄与していることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高濃度溶液の表面増強LIBSにおいて、スピンコーティング法や拭き取り法など、新たな試料作製方法の有効性を示すことができた。また、基板の発光スペクトルから、ポーラスSiの孔内に存在する金ナノ粒子が信号強度の増大に寄与していることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度実証した拭き取り法により、表面処理の現場で使用される高濃度溶液中の元素の定量分析を試みる。このとき、従来の検量線法だけでなく、部分的最小二乗回帰(PLSR)などの多変量解析により定量分析を行う。また、ファイバー伝送系において、ポーラス構造や金ナノ粒子がプラズマの生成閾値に与える影響を調べる。プラズマの生成閾値は、生成初期のプラズマの発光を高速フォトダイオードで検出することにより評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地参加予定であった学会をオンライン参加に切り替えたため。次年度開催されることになったLIBSの国際シンポジウムに使用する。
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