研究課題/領域番号 |
23K04792
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
橋本 剛 上智大学, 理工学部, 教授 (20333049)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 超分子 / 電気化学 / ホウ酸認識 / シクロデキストリン / エンドトキシン(LPS) |
研究実績の概要 |
本研究は,①錯体修飾金属ナノ粒子の電気化学検出機構の解明,②エンドトキシンあるいはホウ素に応答する分子認識部位の開発,③金属ナノ粒子修飾電極と組み合わせた分子認識系の開発,の3つの項目について実施する計画でスタートした.このうち,①の「錯体修飾金属ナノ粒子の電気化学検出機構の解明」に関しては,フェニルボロン酸およびルテニウム錯体を修飾した金ナノ粒子について,極低温NMRを中心とした測定により,その磁気的性質を評価し,論文にまとめることが出来た. ②の「エンドトキシンあるいはホウ素に応答する分子認識部位の開発」については,蛍光部位をもつジピコリルアミン型プローブがエンドトキシンに応答してダイマーを形成することが確認され,これを利用したフローインジェクション型の高感度分子認識について論文を報告できた.またホウ酸の分子認識部位を導入したルテニウム錯体については評価を実施したが,予想よりは大きな電気化学応答が得られなかったため,別の系について検討を行った.その結果,フェロセンを包接させたカテコール修飾シクロデキストリン複合体について,カテコールとフェロセンの共役系同士の空間的相互作用に由来されると思われる電流応答が見られたため,これを用いて条件最適化の上ホウ酸との電気化学応答を調べると,大変興味深いホウ酸応答能が得られることが分かった. 今後,①,②については認識メカニズムの解明を中心に研究を進めていき,また,③についても検討を進めていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の研究概要で挙げた3つの項目のうち,①の「錯体修飾金属ナノ粒子の電気化学検出機構の解明」に関しては,フェニルボロン酸およびルテニウム錯体を修飾した金ナノ粒子について,極低温NMRを中心とした測定により,その磁気的性質を評価し,論文にまとめることが出来た. ②の「エンドトキシンあるいはホウ素に応答する分子認識部位の開発」については,蛍光部位をもつジピコリルアミン型プローブがエンドトキシンに応答してダイマーを形成することが確認され,これを利用したフローインジェクション型の高感度分子認識について論文を報告できた.またホウ酸の分子認識部位を導入したルテニウム錯体については評価を実施したが,予想よりは大きな電気化学応答が得られなかったため,別の系について検討を行った.その結果,フェロセンを包接させたカテコール修飾シクロデキストリン複合体について,カテコールとフェロセンの共役系同士の空間的相互作用に由来されると思われる電流応答が見られたため,これを用いて条件最適化の上ホウ酸との電気化学応答を調べると,大変興味深いホウ酸応答能が得られることが分かった.
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今後の研究の推進方策 |
①の錯体修飾金属ナノ粒子の電気化学検出機構の解明については,中心に金ナノ粒子を用いる系とシクロデキストリンナノゲルを用いる系とを比較することによって,電子が金属コアを導通する電子トンネリングの有無について検証を行う. ②のエンドトキシンあるいはホウ素に応答する分子認識部位の開発については,引き続きフェロセン/カテコール修飾シクロデキストリン包接複合体を用いたホウ酸認識について改良を進めるとともに,その電流増幅あるいはホウ酸認識メカニズムについての解明を行う.またエンドトキシンに応答する蛍光プローブについて分子認識部の構造の最適化を図り,更なる高感度化を目指す. ③の金属ナノ粒子修飾電極と組み合わせた分子認識系の開発に関しては,まずは金属ナノ粒子を介さない修飾電極を開発し,そのLPSに対する認識能を評価していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた機器及び消耗品の購入を見送ったため,予算の残高が生じた.来年度はこれらの購入を勧めるとともに,国際学会への参加費の支出を行う予定である.
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