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2023 年度 実施状況報告書

プラズモンチップへのマイクロバブルアレイの生成とナノ物質の集積

研究課題

研究課題/領域番号 23K04798
研究機関広島工業大学

研究代表者

吉川 裕之  広島工業大学, 情報学部, 准教授 (00314378)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワードマイクロバブル / ナノ粒子 / 局在表面プラズモン共鳴 / レーザー加熱 / 表面増強ラマン散乱
研究実績の概要

水環境中の難溶性有機物・廃プラスチック,細胞が分泌する細胞外小胞など,液中に低濃度で分散するナノ物質が注目されているが,捕集・分析は極めて難しい.本研究ではプラズモン特性を有する基板上にマイクロバブルアレイを高密度に生成し,水中に分散した低濃度のナノ物質を集積・分析する基盤技術の開発に取り組んでいる.本年度は独自のレーザー加工技術で作製したミクロ周期構造を持つプラズモンチップ(銀ナノ構造グレーティング)上に試料溶液を滴下し,近赤外レーザーの集光スポットをスキャンして高密度のマイクロバブルアレイを生成するためのシステム開発を実施した.また,プラズモンチップ表面に吸着したテストサンプルの分光計測も実施した.以下に詳細を示す.
1)プラズモンチップを作製するため,金ナノ粒子修飾基板表面に波長532 nmのレーザー干渉縞を照射し,プラズモン誘起還元反応により銀ナノ構造グレーティングを作製するシステムを構築し,動作を確認した.
2)波長1064 nmの近赤外レーザーを光学顕微鏡に導入してプラズモンチップ表面に集光し,電動ステージ制御により集光スポットを走査してマイクロバブルアレイを生成するシステムの構築した.近赤外レーザー強度およびスキャンスピードと,生成されるマイクロバブルのサイズ生成効率を調べ,プラズモンチップ上にマイクロバブルアレイを高密度かつ安定に生成するための条件を探索した.
3)ポリスチレンナノ粒子を吸着させたプラズモンチップからの表面増強ラマン散乱スペクトルを測定し,ポリスチレン特有のラマン散乱ピークを検出するためのデータ解析技術の開発に取り組んだ.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

プラズモンチップを作製するため,基板表面にレーザー干渉縞を照射し,プラズモン誘起還元反応により銀ナノ構造グレーティングを作製するシステムを構築した.デジタルカメラで基板上の構造作製位置を認識し,各照射位置へのレーザー照射を自動的に行うシステムを完成させ,銀ナノ構造グレーティングが設計通り作製できることを確認した.さらに,電動ステージを制御して近赤外レーザーの集光スポットをプラズモンチップ上でスキャンし,マイクロバブルアレイを生成するシステムを構築した.レーザー強度,スキャンスピードを最適化することにより,水中において直径約60ミクロンのマイクロバブルを90%以上の効率で生成することができた.一方,レーザー強度やスキャンスピードがある条件において,レーザー照射位置に生成したバブルが変位し,バブルの配列が乱れたり,バブル同士の融合が生じる現象も確認できた.
テストサンプルとして市販のポリスチレンナノ粒子をプラズモンチップ表面に吸着させ,表面増強ラマン散乱スペクトル測定を実施した.複数のスペクトルデータを多変量解析することにより,ポリスチレンナノ粒子由来のラマン散乱ピークが抽出出来ることを示した.

今後の研究の推進方策

・構築したシステムを用いて,プラズモンチップ上にマイクロバブルアレイを高密度かつ安定に生成するための条件を決定する.プラズモンチップの構造(銀ナノ構造の膜厚,周期),レーザーの強度とスキャンスピード(照射時間)などの各条件をパラメータとして,生成するマイクロバブルのサイズ,生成率,生成・消滅速度などをより詳細に解析する.また,初年度の研究において確認された,バブルが生成位置から変位し,配列の乱れやバブル融合が起こる原因について調べ,解決方法を探る.
・試験物質として蛍光色素含有ポリスチレンナノ粒子や蛍光色素標識タンパク質を水中に分散させ,基板上への集積量の2次元分布を蛍光イメージングにより定量する.粒子のサイズや濃度と集積量の関係を明らかにする.また,非蛍光性のナノ粒子やタンパク質をターゲットとし,基板に吸着した粒子を表面増強ラマン散乱により計測し,分子種や集積量の解析に取り組む.他のポリマー粒子やタンパク質分子,複数種のナノ物質などを溶液中に分散させ,集積量の違いなどを解析してバブル吸着の物質選択性や,本手法の適用範囲について調べる.
・近赤外レーザー光を複数のスポットに集光し,一度のステージスキャンでマイクロバブルの2次元アレイを生成する.励起レーザーも複数のスポットに集光し,各点における蛍光や表面増強ラマン散乱スペクトルを1スキャンで測定する.各スポットからのスペクトルデータに対し,機械学習によるデータ解析を行い,網羅的・統計的な解析を実施する.

次年度使用額が生じた理由

学会がオンライン実施となったため,当初予定していた旅費の支出がなかった.使用機器の故障もなかったため,保守修理費用も発生しなかった.次年度は学会参加のための旅費,参加費,機器の保守修理費用として使用する予定である.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 機械学習を利用したナノプラスチックの表面増強ラマン散乱分析2023

    • 著者名/発表者名
      船山雄汰,中川涼介,藤井光太郎,永宗慧大,吉川裕之
    • 学会等名
      第74回 電気・情報関連学会中国支部連合大会

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公開日: 2024-12-25  

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