研究課題/領域番号 |
23K04800
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
絹見 朋也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (90293125)
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研究分担者 |
末松 和美 (七種和美) 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (60608769)
浅川 大樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 上級主任研究員 (60584365)
川崎 ナナ 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 教授 (20186167)
加藤 昌弘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (70392602)
山口 英俊 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (10783194) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | モノクローナル抗体 / 質量分析 / 構造解析 / ペプチドマッピング / 放射線 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、医薬品としてRI標識抗体が用いられつつあるなか、抗体分子の放射線による影響について質量分析を駆使して明らかにし、抗体分子の放射線による構造変化、障害や安定性に関する分子基盤を構築することにある。 令和5年度は、モノクローナル抗体溶液(IgG1, NMIJ 6208a, AIST-MAB)およびメチオニンを含むAIST-MABの部分ペプチドについて、コバルト-60を線源とする50-500 Gyのガンマ線照射実験を行った。さらに、ガンマ線照射試料について各種分析を行い、抗体分子全体の構造への影響を精査した。マイクロチップ電気泳動によってフルボディのヘテロ四量体構造が300 Gy以上で約10 %減少する一方、二量体の含量が10倍程度増加することがわかり、マクロな一次構造は概ね保たれ、凝集が進むと考えられた。陽イオン交換クロマトグラフィーによる分析では酸性異性体の顕著な増加がみられ、300 Gy以上で急激にピーク強度が低下しピークがブロードとなることから300 Gyを境に急激な構造変化が起こることが示唆された。 また、抗体分子のN-結合型糖鎖のガンマ線照射よる影響について、糖ペプチドマッピングにより解析した。ガンマ線照射抗体をトリプシン消化して得られたペプチド混合物についてLC-MS/MS測定を行い、15種類のN―結合型糖鎖の構造に対応する糖ペプチドのピーク面積を求めた。本研究で用いた照射線量の範囲ではこれらのピーク面積に変化はなく、糖鎖構造は保たれていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は抗体へのガンマ線照射実験、および照射抗体のサイズや電荷異性体分布の測定により一次構造のマクロな変化を解析した。側鎖の構造については糖鎖構造の変化を詳細に解析した一方、当初計画していた脱アミド化とメチオニン酸化の解析までには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2024, 2025年度はガンマ線照射抗体について、側鎖の構造解析、および熱安定性と抗原ペプチドとの結合特性を解析し、放射線によるタンパク質の構造への影響について多角的な検証を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の予定が一部遅延し、費用を要するペプチドマッピングおよびペプチド合成を次年度に持ち越すこととなったため。
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