研究課題/領域番号 |
23K04804
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
永谷 広久 金沢大学, 物質化学系, 教授 (90346297)
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研究分担者 |
坂江 広基 金沢大学, 物質化学系, 助教 (00779895)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | デンドリマー / ミトキサントロン / 生体膜模倣 / 液液界面 / 分光電気化学 |
研究実績の概要 |
カチオン性のアントラキノン系抗がん剤であるミトキサントロン(MTX)について,水|有機溶媒界面に双性イオン型リン脂質を吸着させた生体膜模倣液液界面を用いた膜透過反応機構の分光電気化学解析を実施した。MTXは二段階のプロトン付加により,水相中の化学種が塩基性条件下では中性種,中性から酸性条件下では1価または2価のカチオン種に変化する。界面反応挙動は水相pHに依存して変化し,電気化学測定から得たイオンパーティションダイアグラムによってイオン種の移動電位(溶媒間移行エネルギー)や分配係数などの平衡論的パラメータを決定した。分光電気化学的手法を用いた界面反応機構の詳細な解析から,界面を横切るイオン移動反応が界面吸着過程を伴うことを明らかにした。さらに,生体膜模倣界面ではMTXの吸着性が増大するとともにイオン移動反応の促進が観測された。また,薬剤の分子キャリアとして機能することを確認している双性イオン型ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーとの相互作用を研究し,界面反応機構を明らかにした。pH 7.4付近ではMTXの1価カチオン種が高世代型デンドリマーと強い相互作用を示す一方,酸性条件下では2価カチオン種との相互作用が弱くなり,デンドリマーとの相互作用に顕著なpH応答性が見られた。MTXは適切な電位条件を選ぶことでデンドリマーと解離して相間移動するが,リン脂質吸着層へのデンドリマーの吸着によって界面反応挙動が変化することを明らかにした。これらと並行してアニオン性のbis-MPA-COOHデンドリマーや貯蔵タンパク質であるフェリチンについても薬剤キャリアとしての機能性の評価を進め,各種イオン性薬剤との相互作用を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カチオン性抗がん剤であるミトキサントロン(MTX)の膜透過機構の解析および双性イオン型PAMAMデンドリマーとの相互作用について研究し,pHや電位に応じてMTXの膜吸着や相間分配特性を制御できることを明らかにできた。さらに,他のイオン性薬剤や分子キャリアに対する基礎検討に着手することができた。また,分光電気化学計測システムに新たなレーザー光源を導入して改良し,研究可能な薬剤分子の対象範囲を広げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
各種カチオン性色素と薬剤分子をゲスト分子として用い,低世代から高世代のアニオン性bis-MPA-COOHデンドリマーについて分子キャリアとしての機能性をPAMAMデンドリマーと比較検討し,pHや電位を外部刺激とした包接挙動や界面反応機構(膜反応),相間分配特性の制御などについて研究を進める。デンドリマーと多点相互作用による強い静電相互作用が期待できるカチオン性ポルフィリンを蛍光プローブとして用い,電位変調蛍光分光法によるbis-MPA-COOHデンドリマーの液液界面反応挙動の動的解析を実施する。蛍光プローブは凝集誘起発光色素なども検討し,デンドリマーの反応挙動を高感度解析するために最適な反応系を採用する。また,リン脂質膜表面におけるカチオン性薬剤のイオン移動・吸着反応挙動の解析も引き続き実施し,とくにアントラサイクリン系抗がん剤,アントラキノン系抗がん剤の界面挙動に対するbis-MPA-COOHデンドリマーの影響を中心に研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
導入機器の機種選定に起因する物品費の変動によって生じた残金は次年度物品費として活用する。
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