研究課題/領域番号 |
23K04811
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
田邉 一郎 立教大学, 理学部, 准教授 (80709288)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 紫外可視分光 / 界面分光 / 有機半導体 / 減衰全反射法 |
研究実績の概要 |
本研究では、有機薄膜太陽電池のp型/n型半導体界面で生成した正孔と電子が、それぞれの半導体中を拡散して電極に到達するまでのダイナミクスを、分光学的に明らかことすることを目的としている。それに向けて、まずは各種有機半導体の紫外可視分光測定をした。特に、減衰全反射型(ATR型)の紫外可視分光装置を利用することで、界面敏感な分光分析を推進した。その結果、代表的なp型有機半導体であるP3HTにおいて、汎用的な透過型紫外可視分光測定では検出されない、長波長域(700 nm)での特徴的な吸収がATR測定では検出された。これは、ATRプリズム界面近傍において、共役長の長い結晶性のP3HTが形成されていることを示唆している。P3HTにおいては、多角入射での紫外分光も遂行しており、これまでに入射角度に依存したATR紫外スペクトルの変化を明らかにした。これも、界面からバルク層にかけて、P3HT薄膜の電子状態が変化していることを示唆しているものである。 また、代表的なn型半導体であるフラーレンとフラーレン誘導体の紫外可視分光も行った。透過法とATR法のいずれにおいても、P3HTとは異なる波長域でのフラーレン由来の吸収が測定された。 これらの結果は、ATR紫外可視分光装置を活用することで、P3HTやフラーレンに代表される有機半導体を組み合わせた太陽電池において、それぞれの層を分離しながら分光分析することができることを示している。 なお、測定されたスペクトルの解釈には量子化学計算も活用し、検出された吸収の帰属も行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
p型半導体とn型半導体から構成される有機薄膜太陽電池の、光照射中すなわち電池動作中の電子状態を明らかにするために、分子内での電子励起あるいは分子間の電子移動にともなう光吸収を検出する紫外可視分光を推進した。本研究では特に、界面敏感な分光法であるATR法での測定を推進し、汎用的な透過法との比較を行っている。最終的な目標に向けて、まずは計画通りに各種有機半導体のATR紫外可視分光測定を実現できており、おおむね順調に進展しているといえる。 また、透過法では検出されない界面特有の長波長側でのP3HT薄膜の結晶性に由来する吸収ピークも検出された。これは、界面分光法としてのATR紫外可視分光法の有用性を示すものとして、今後の研究につながるものである。 別の半導体であるフラーレンの測定も順調に進んでおり、今後はこれらを組み合わせた複合材料の分光分析を推進する。その結果の解釈、これまでに進めた各分子の吸収スペクトル測定結果は役立つものである。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに測定したp型有機半導体とn型有機半導体を組み合わせた複合材料の、紫外可視分光を行う。両者は電子のドナーとアクセプターとなっており、組み合わせたことによる電子状態の変化が検出されることを期待している。また、太陽電池として動作する、光照射したので測定も実現する。これには、これまでに申請者が開発してきた光照射型のATR紫外可視分光装置を活用する。また、今後は、電気化学測定系を組み合わせることで、光電流などの電池特性の同時測定も目指す。 また、ATR分光法は、光の入射角度によって、その測定深さを制御することができる。p型とn型の2つの有機半導体膜を積層した膜を測定対象として、多角入射測定をおこなうことで、2つの有機半導体中の電子状態変化の深さ依存性を明らかにする。 さらに、これまでに明らかになったP3HTの結晶性由来のピークに着目することで、固体基板が、P3HTなどの有機半導体界面の構造に与える影響を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
多角入射測定のための装置改造に必要な部品の調達が国際情勢から遅れ、次年度に持ち越しとなったため。また、測定の効率化で使用した試薬は、すでに調達済みのもので済んだ。次年度以降に装置改造を施すとともに、新たな測定対象となる試薬類の購入もして、本研究を推進する。
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