研究課題/領域番号 |
23K04817
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
松岡 史郎 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10219404)
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研究分担者 |
吉村 和久 九州大学, アイソトープ統合安全管理センター(伊都地区), 学術共同研究員 (80112291)
宮崎 義信 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (50253365)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 溶存鉄 / 化学状態別分析 / 固相分光法 / フェナントロリン |
研究実績の概要 |
本研究では、水試料中の溶存Feの酸化状態に関する正確な情報を取得する必要がある。この目的のためにFe(II)-フェナントロリン(phen)錯生成系を適用した固相分光法をこれまで用いてきたが、同法の正確さを評価するために、試料溶液中の溶存Fe分析を行う過程で生じる可能性があるFeの酸化状態の変化について検討した。 実試料中においてFeは有機錯体として存在している可能性が高い。したがってモデル配位子としてエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を共存させた場合のFe-phen錯生成系で、溶存Feの酸化状態について検討した。Fe(II)-phen錯生成における至適pHであるpH 5において、EDTA濃度が1.0×10-5 mol dm-3以下ではFe(II)-phen錯生成が完全に進行し、溶存酸素の存在下でもFe(III)に酸化されることなく錯体は安定に存在することが確認できた。しかしながらpHを海水とほぼ同じ8としたところ、わずか3分程度で95 %以上のFe(II)が溶存酸素によってFe(III)に酸化された。またFeの酸化が生じたこの溶液にphenを添加すると、溶存酸素によって酸化されたFe(III)からFe(II)への還元が徐々に起こり、1時間後で10 %程度、4時間後では25 %程度のFe(II)が検出された。本研究では、試料採水時にCO2 を溶解させてpH を6 以下に下げた後に酸処理した試料を定量に供し、さらに定量操作は0.5時間程度で終了するが、上述の結果よりこの試料採取法と定量法で、Feの酸化状態を変化させることなく正確さの高い定量が行えていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、溶存超微量Feの酸化状態別濃度についての信頼性の高いデータが必要であるが、本年度はデータの正確さを再確認する必要が生じたため、実試料分析が十分に行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画よりもやや遅れてはいるが、以下の点を残る研究期間の2年間で実施する。 1)分析法の再検討:フロー法を用いた定量操作の簡便化と採取した試料の保存が不要な現場分析法への適用(on-site分析化)。 2)実施料採取とFeの酸化状態別分析 3)生物利用される鉄化学種に関する情報の取得:赤潮発生前後の溶存鉄のスペシエーション分析を行うことで、栄養塩や重金属濃度、植物プランクトン量などとの関係から、生物利用される鉄化学種に関する情報を取得する 4)Fe(II)の酸化を抑制するメカニズムに関する検討:種々の有機配位子を添加した人工海水中において、溶存酸素によるFe(II)の酸化速度を測定する。さらに酸化によるFe(II)濃度の経時変化のモデリングを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究に必要な現有装置の修理費用としてR6年度に20万弱を支出する予定としたため、その金額を繰り越すこととした。
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