研究課題/領域番号 |
23K04828
|
研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
福嶋 貴 大阪工業大学, 工学部, 講師 (40580072)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
キーワード | 電極触媒 / 修飾電極 / クリック反応 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、カーボンニュートラルな資源であるバイオマス由来化合物を、再生可能エネルギー由来電力の利用が可能な電気化学反応により高付加価値化合物に変換することで、原料と生産工程の両方が低炭素化された高付加価値化合物の生産プロセスを構築することである。そのために、資源量に制限がなく、詳細な分子設計により反応に高い選択性を賦与することが可能な有機分子触媒を表面に固定化した電極を作製し、これを用いて、バイオマス由来化合物である5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)やシュウ酸の電気化学的な酸化還元反応を行うことで、高付加価値化合物の合成に取り組む計画である。 本研究課題の目的・計画に沿って、2023年度は分子性の化合物を電極表面に固定化する技術の確立を行った。具体的には、①トリアルコキシシリル基とアジド基を持つアンカー分子をトリアルコキシシリル基の加水分解と脱水縮合により金属酸化物電極の表面に共有結合で頑強に固定し、エチニル基を持つ分子をクリック反応によりアンカー分子に結合させる方法、②アジド基を持つチオフェンの電解重合により、電極表面にアジド基を持つチオフェンのポリマー膜を作製し、ポリマー鎖上のアジド基にエチニル基を持つ分子をクリック反応により結合させる方法の2種類の方法を検討した。2023年度は電極への分子固定化法の確率が目的であるため、電極表面に固定化する分子は、本来の目的の有機分子触媒ではなく、明確な電気化学応答が得られやすいフェロセンにした。その結果、①と②いずれの方法でフェロセンを固定化した場合でも、電極のサイクリックボルタンメトリー(CV)を測定すると、フェロセンに由来する可逆な酸化還元波が観測され、フェロセン分子の電極表面への固定が確認された。さらに、CVの多重掃引実験(100サイクル)により、何れの固定化方法も十分な耐久性を有することが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の当初の計画では、2023年度にトリアルコキシシリル基とアジド基を持つアンカー分子とエチニル基を持つ修飾分子の組み合わせにより、分子触媒を電極上に固定化する方法を確立することになっており、「研究実績の概要」で述べたように、計画は達成されている。さらに、アジド基を持つポリチオフェンと、エチニル基を持つ修飾分子の組み合わせによるもう一つの分子触媒の固定化法も確率することができた。このことは、分子固定化の耐久性や、電極と修飾分子間の電子移動の速度など、実際に修飾分子が電極触媒として機能する上で重要な項目について、複数の選択肢を用意することであり、今後の研究の進展に向けて非常に意義深い成果である。
|
今後の研究の推進方策 |
4年計画の初年度である2023年に、分子触媒の電極表面への固定化法を2種類確立することができた。今後は、それぞれの方法で固定化した分子と、電極との間の電子移動の速度を、電気化学測定により明らかにすることで、どちらの方法がより分子触媒の固定化に適しているかを判断する。その後、分子触媒を固定化した電極を用いて実際にバイオマス由来化合物である5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)やシュウ酸の電気化学的な酸化還元反応を行うこと、そして、その反応条件の最適化を行うことにより、目的とする高付加価値化合物の高効率・高選択的な合成を目指す。ここまでを、2024〜2025年度に行い、2025年度と最終年度の2026年度には、高効率・高選択化が済んだ電気化学反応から順次、これまでの2室型電気化学セルを用いたバッチ反応ではなく、フロー型電気化学セルを用いた反応に挑戦していく。このことにより、支持電解質が不要で連続運転が可能な、より実用性の高い電気化学反応系の構築を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度には物品費としてポテンショガルバノスタット(バイオロジック社SP-150e)1,000,000円を計上していたが、在庫がない上に海外からの手配に時間がかかるために、年度内に購入することができなかった。そこで次年度に、同等の性能を持つポテンショガルバノスタットを他のメーカーから同程度の価格で購入予定である。
|