研究課題/領域番号 |
23K04864
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
鈴木 登代子 神戸大学, 工学研究科, 助教 (40314504)
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研究分担者 |
南 秀人 神戸大学, 工学研究科, 教授 (20283872)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ビーズミル / 平板状粒子 / 異形高分子微粒子 / ミクロンスケール加工 |
研究実績の概要 |
本研究では、円盤状粒子作製における上述の問題点<多段階で複雑な作製処方、少量スケール、PS限定>を解決する、新たな円盤状粒子作製手法として、<容易、スケールアップ、ポリマー種の制限無し>なミリング法の確立と体系化を目指している。初年度である本年度は,まずはビーズミルでの撹拌条件と粒子の変形度の関係性を見出すために,粒子サイズの異なるポリスチレン(PS)粒子をモデル系として検討を行った。検討項目は次の通りである。 1)粒子の大きさの影響:大きさの異なるサブミクロンからミクロンサイズのPS粒子は分散重合法およびシード分散重合法により作製を行った。 2)ビーズと試料粒子のサイズ比(曲率比):ビーズミルで撹拌する間に,試料高分子粒子がジルコニアビーズに挟まれるような形で押しつぶされることが,変形機構であると考えている。そのため,曲率比が異なると,粒子との接点が面に近いほど,大きく変形する。 3)変形による試料粒子の物性の変化: ビーズミルを用いてPSラテックスを24時間撹拌した直後に温度を測定すると,30度未満であった。ビーズ間の押しつぶしにより変形すると考えているが,ガラス転移温度以下の変形であるため,変形前後で諸物性に変化がないか確認を行う 4)複合(異形)粒子の作製:まずはPSとポリメタクリル酸メチル(PMMA)からなるコアシェル粒子を作製し,良溶媒のトルエンで膨潤させた後,異なる界面活性剤濃度でトルエンを徐放して異形化させる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である本年度は,次の項目の検討を中心的に行った。 1)粒子の大きさの影響:大きさの異なるサブミクロンからミクロンサイズのPS粒子は分散重合法およびシード分散重合法により作製を行ない,300nmから10ミクロンまでの色々なサイズの単分散PS粒子を作製した。 2)ビーズと試料粒子のサイズ比(曲率比):ジルコニアビーズと粒子のそれぞれのサイズを変えて変形を行ったところ,ビーズがより大きいほど粒子は変形しやすくなり,曲率比が小さすぎると変形しなかった。曲率比をとり関連性を確認したところ,粒子を変形させるためには適切な閾値(ビーズの方が50倍以上大きい必要がある)があることが判明した。また,適切な曲率比であれば,粒子径に依らず,数百nmの大きさであっても粒子は扁平化した。 3)変形による試料粒子の物性の変化:ビーズミルで24時間撹拌し,変形前後のポリスチレン及びポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子のガラス転移温度と分子量をそれぞれ測定したが,いずれも変化は認められなかった。PS,PMMA共に,ミリング前後で分子量の変化がないことが確認でき,ミリングによって分子鎖が切れることはないと明らかとなった。このことから,ビーズ間に挟まれたPS粒子がその衝突のエネルギーによりつぶれることにより変形したことが明らかとなった。 4)複合(異形)粒子の作製:PSとPMMAからなるコアシェル粒子を作製し,良溶媒のトルエンで膨潤させた後,異なる界面活性剤濃度でトルエンを徐放して異形化させた。サブミクロンサイズのダンベル状PS/PMMA粒子を作製し,ビーズミルにて潰してみたところ,サブミクロンサイズの蝶型粒子が作成された。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は,種々の高分子微粒子を用いてミリング実験を行い、変形度をもとめ、高分子種が変形に及ぼす影響を体系化する。バルク物性と変形度との関連をより明らかにするために、ポリイミドなどの剛直な主鎖構造を有するものや、ガラス転移温度が大きく異なるような高分子種など様々に検討を行う。これを通じて、ミリング法により何故平板化するのか解明する。さらに,2種類以上の高分子微粒子からなる複合粒子を用いて、検討を行う。複合粒子は、コアシェル型やヤヌス型などの真球状だけでなく、雪だるま状など異形形態を付与し、様々な形状の新しい薄板状(複合)粒子を作製する。とくに,所属する研究室にて開発した界面活性剤間水素結合を利用したコロイド構造体創製法への適用を目指し,異なる界面活性剤を有する異形複合粒子を作製して検討を進める。
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