研究課題/領域番号 |
23K04866
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
戸谷 匡康 鹿児島大学, 理工学域工学系, 助教 (20773500)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 高分子 / 高分子界面 / 金属界面 / 接着剤 / 銅 / リガンド配位子 / 錯体形成 / ターピリジル基 |
研究実績の概要 |
金属-樹脂間のより高い接着を実現するためには、金属表面に対する樹脂本体の接着力を向上させ、かつ、金属-樹脂界面層領域の分子構造を制御し安定化に繋がる因子を導入する必要がある。 本研究では、エポキシ樹脂の硬化過程において内部に含まれる1成分が表面・界面に特異的に濃縮する表面濃縮現象の観点から、ターピリジル(Tpy)基を有する低分子化合物に着目した。 Tpy基を有する低分子のモデル化合物として、4'-オキサニルメトキシ-2,2':6',2''-ターピリジル (Tpy-EP)を合成した。Tpy-EPは1分子内に金属配位結合が可能な官能基であるTpy基と、既存の接着剤分子に共有結合が可能なエポキシ基を有している。 我々は既存の接着剤であるビスフェノールA ジグリシジルエーテル (DGEBA)、およびポリオキシプロピレンジアミン (POPDA)をそれぞれ主剤および硬化剤として選択し、このTpy-EPを添加することにより銅基板に対する接着強度を評価した。Tpy-EP化合物を添加した接着剤を用いて2枚の銅基板をで接合したサンプルを引張試験により接合強度を評価した。また、切断した接合面をマイクロスコープにより観察した。 実験結果から、Tpy-EP化合物を添加した接着剤は、未添加の接着剤に比べ銅基板に対する接着強度が向上した。また、銅基板上にはTpy-EPを添加した接着剤が多く残存することが明らかとなった。 以上の結果から、Tpy-EP化合物を接着剤に添加することで接着界面近傍の凝集構造へ影響、ひいては金属表面に対する接着特性の向上が示唆された。。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
接着力向上剤して4'-オキサニルメトキシ-2,2':6',2''-ターピリジル (Tpy-EP)を合成した。合成方法は既存の接着剤の製造にも応用可能であり、安価な手法により高収率で得られることがわかった。 Tpy-EP化合物は想定していた通り、既存の接着剤に混合することにより銅基板に対する接着強度が向上した。
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今後の研究の推進方策 |
4'-オキサニルメトキシ-2,2':6',2''-ターピリジル (Tpy-EP)を添加した接着剤が、未添加の接着剤に対し、接着強度が向上したメカニズムを解明する。 特に、金属イオンがTpy-EP化合物含有接着剤の内部に取り込まれた際、接着剤内部の化学構造の変化を小角X線散乱法などを用いて明らかにする。金属基板表面に残存した接着層から金属-樹脂界面の凝集構造や化学構造を明確にする。 Tpy基のようなリガンド化合物が金属表面に対し、接着優位性を評価するため様々な金属種の基板を用いて評価を行うことでサンプルの特性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属先の変更に伴い、本プロジェクトを新たな研究環境で継続するため次年度に持ち越した。
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