有機デバイスの高性能化に向けて有機半導体の開発が盛んに行われている。例えば有機電界効果トランジスタ(OFET)や有機薄膜太陽電池(OPV)では効果的なキャリア輸送のためには、薄膜状態の結晶性や配向性といった「薄膜構造」の制御が必要である。 OFETでは、再配向エネルギーが小さい材料の方が電荷輸送に有利なため、剛直な骨格を有する材料が良いと考えられている。エネルギー準位も重要であり、p型材料では大気安定性、n型材料では電子輸送の際に酸素にトラップされないため深いエネルギー準位が必要である。また、OPVでは多くの光を吸収するためにはバンドギャップは小さい方が良いが、開放電圧はp型材料のHOMOとn型材料のLUMOの差に相関があるため、適切なエネルギー準位の調整が必要である。このようにそれぞれの目的に応じてエネルギー準位の制御は必要であり、そのためには、材料の分子設計としてヘテロ原子を有する芳香属化合物を有するラダー型骨格の開発は有効である。 これまでに、骨格の中心にナフトビスチアヂアゾール(NTz)を有するラダー型骨格を開発し、OPVやOFET材料へと展開してきた。本研究ではさらに電子欠損性の高いナフトビスオキサジアゾール(NOz)を有するラダー型骨格の開発を検討した。NOzを有するラダー型骨格は従来のNTzのものと比較して低いエネルギー準位を有し、OPVの型材料への応用が可能であることが明らかとなった。
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