研究課題/領域番号 |
23K04888
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
齋藤 典生 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (20822456)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ペロブスイカイト / 多孔性金属錯体 / ナノ結晶 / イオン交換 / 核生成 / ハロゲン化物 |
研究実績の概要 |
鉛イオンを導入した多孔性金属錯体 (MOF)を前駆体に用い、溶液中でCH3NH3X (X = Cl, Br, I)と反応させることで、CH3NH3PbX3ナノ結晶とMOFの複合体の作製を試みた。生成物の粉末X線回折やX線吸収微細構造分析の結果から、生成物はMOFの結晶構造を保ちつつ、CH3NH3PbX3が結晶化していることを確認できた。X = Brのサンプルについて、透過型電子顕微鏡を用いてナノ構造を観察したところ、平均粒径3.2±0.8 nmのナノ結晶がMOFの表面あるいは内部に高密度に分散していることを確認した。同様の結果がX = Cl, Iでも得られており、MOF中にMAPbX3ナノ結晶を導入する合成反応を確立できた。
また、研究申請書に記載していないが、イオン交換によって鉛イオンを導入した層状ポリシリケートを前駆体に用いた合成実験も並行して検討を行い、上記と類似の合成手法でCH3NH3PbX3ナノ結晶/層状ポリシリケート複合体の作製に成功した。CH3NH3PbX3ナノ結晶と層状ポリシリケートを複合化することで、サンプルを水中に浸漬した際の発光の安定性を大幅に向上できることを見出しており、層状ポリシリケートの無機ナノシート層間にCH3NH3PbX3ナノ結晶が埋包されていると考察している。その他、金属イオンを導入したメソポーラスシリカを前駆体に用いた合成実験も検討を進めている。
上記の実験と並行して第一原理バンド計算用のPCクラスターを準備し、MOFやペロブスカイト化合物の仕事関数やバンドアライメントを計算するための環境を整えた。第一原理計算がMOFのバンド構造を再現可能か判断するため、MOFの状態密度やバンド構造を計算し、実測のX線光電子分光スペクトルと比較を行った。この検討で、MOFの価電子スペクトルやバンドギャップを再現するための最適な計算条件を明らかにし、本計算条件を用いてMOFのバンドアライメントを予測した。現在、様々なペロブスカイト化合物の表面モデルを用いたバンド計算を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結晶化手法に関する検討については、概ね計画通りに進捗できている。CH3NH3PbX3ナノ結晶のバンドギャップ制御および安定性向上を目的として、C4H9NH3+などの比較的大きなカチオンを導入する検討を計画しているが、結晶の核生成手法に目途が立ちつつある。また、実験と並行して第一原理計算用のPCクラスターを準備し、MOFやペロブスカイト化合物の仕事関数やバンドアライメントを予測するための環境を整えた。現在、表面モデルを用いた計算を行っており、こちらも計画通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、作製した複合体の触媒活性の評価を予定している。CO2の光還元反応を検討するため、メタナイザーを備えたガスクロマトグラフィー装置と石英ガラス製の光学セルを準備した。これらの装置を用いて、光触媒活性の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
あいちシンクロトロン光センターで軽元素ZAFSを予定していたが、実験を行えなかったため、次年度使用額が生じた。同センターのZAFS測定に使用する予定である。
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