研究課題/領域番号 |
23K04898
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
草野 圭弘 岡山理科大学, 工学部, 教授 (40279039)
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研究分担者 |
牧 涼介 岡山理科大学, 工学部, 助教 (30881693)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | セラミックス / 備前焼 / 微構造 / 結晶 / 斜長石 / 輝石 |
研究実績の概要 |
薪を燃料として登り窯で焼成した備前焼の上部は、薪の灰と鉄分を多く含む粘土(備前粘土)が反応により、「胡麻」と称される黄土色になる。この黄土色は、黄瀬戸の黄色の釉薬と同じく、三価の鉄イオンを含む液相がガラス化することで現れると考えられてきた。登り窯で焼成した備前焼の胡麻部の生成相について検討した結果、胡麻部の主生成相は、斜長石および輝石の結晶相で、ガラス相の生成は少ないことが分かった。胡麻部の断面につて微構造観察を行った結果、スティック状(または板状)の斜長石粒子間のガラス相中に透輝石が生成していることが分かった。やきものの呈色の要因となる元素は鉄やチタンなどの遷移金属または希土類元素である。備前粘土には酸化鉄(III)換算で約3wt%の鉄分を含んでいるため、備前焼表面に現れる色は全て鉄が関与している。胡麻も鉄を含む化合物の生成に起因すると考えられ、鉄を含む元素分析を行った。その結果、鉄イオンは輝石中に多く含まれていることが明らかとなった。輝石に鉄が置換すると褐色となることから、胡麻は白色の斜長石および褐色の鉄置換輝石の生成により黄土色に見えると考えられた。 登り窯で焼成する際に燃料として用いられる赤松の灰について、蛍光エックス線により元素分析を行った結果、マグネシウム、カルシウムおよびカリウムが多く含まれていることが分かった。そこで、灰と同じ成分になるよう試薬を用いて調整した疑似灰と備前粘土を種々の割合で混合し、混合量と生成相および色調について検討した。その結果、疑似灰と備前粘土が30:70(wt%)の混合物を大気中にて1220℃で5時間焼成した試料表面に、褐色のガラス相中に白色の結晶が生成した。生成相について検討した結果、輝石および斜長石が生成しており、登り窯で焼成した備前焼表面の生成相と同じであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画通り、おおむね順調に進捗している。燃料の薪の灰と備前粘土の反応により現れる胡麻の黄土色は、灰によって生成した液相中の鉄イオンに起因すると考えられていたが、胡麻部の主な生成相は結晶相であることを明らかにした。また、灰の分析により、胡麻の形成に必要な成分を特定し、試薬による胡麻の再現を検討した。その結果、登り窯で焼成した備前焼表面に生成する結晶相と同じ結晶相の生成を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、登り窯内における備前粘土と灰の反応過程を解明する。また、試薬を用いて作製した人工的な灰(疑似灰)と備前粘土を種々の割合で混合し、電気炉にて焼成した試料について、備前粘土と疑似灰の反応過程を検討し、登り窯内の反応との相違点を明らかにする。更に、得られた試料表面の生成相、色調および微構造の関連について明らかにする。
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