研究実績の概要 |
安全性・長寿命等の優れた特性をもつ硫化物系全固体電池は電気自動車用大型蓄電池の最有力候補である。この需要拡大を見据えレアメタルのLiを資源量の豊富なNaに代替した全固体ナトリウムイオン電池(全固体SIB)の研究も開始された。SIBの課題であるエネルギー密度向上のため、高容量負極である黒リン(BP)の利用が望まれるが、充放電に伴う体積変化に起因したサイクル劣化など課題が多い。本研究では全固体SIBに適したBP負極複合体の構築を目指す。 全固体ナトリウムイオン電池で黒リンを評価するための基盤を整えるため、固体電解質の選定、対極の選定、負極複合化方法の検討を行った。具体的には、既報に従いナトリウムイオン伝導性固体電解質としてNa3PS4ガラスセラミックスの合成を行った。Na2SとP2S5をボールミル(510 rpm, 20 h)にてメカニカルミリングを行うことによりNa3PS4ガラスを作製し、270℃で加熱することによりガラスセラミックス化した。交流インピーダンス測定より30℃でのイオン伝導度は~10-4 S cm-1であった。また、対極は、Na3PS4にNa金属を張り付けると固体電解質の還元分解が懸念されたため、NaSb合金(0.5-1 V vs. Na+/Na)を選定した。また、既報に従いメカノケミカル法により赤リンから黒リンを合成した。負極複合体は黒リン、Na3PS4、及びABを乳鉢による手混合を行い作製した。セル作製はNa3PS4粉末(80 mg)を筒に入れて37 MPaでプレスして固体電解質層を形成後に、負極複合体(10 mg)を片面側に入れて、反対側にNaSb合金(10 mg)を入れて333 MPaで5分間プレスし構築した。交流インピーダンス測定、サイクリックボルタンメトリー、充放電測定による電気化学的評価を行い、測定条件の選定を行った。
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