研究課題/領域番号 |
23K04907
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 耕太 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (40708492)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | リチウム硫黄電池 / 全固体電池 / 電極複合体 / メソポーラスカーボン / 金属リチウム負極 |
研究実績の概要 |
本研究は、全固体型リチウム硫黄電池の高性能化を達成するため、様々な活物質、固体電解質、合成法を用いて正極および負極複合体の設計および構築を行う。目標は、(i) 固体電解質と電極複合体の作製法の多様性開拓、(ii) リチウム含有正極複合体の作製と高性能化、および(iii) 金属リチウム負極複合体の作製と高性能化、の3点である。 2023年度は主に、前駆体処理、合成プロセス、熱処理温度などの検討により、(i) 固体電解質合成の多様性開拓と(ii) 正極複合体構築の最適化を進めた。具体的には、アルジロダイト型Li6PS5X (X = Cl, Br)の単相が再現良く得られる、液相合成プロセスを確立した。また、液相プロセスにより5µm以下の均質な粒子が得られることが分かった。Li2S活物質と三次元規則配列したメソ孔を有するカーボンレプリカ(CR)を、4対1の重量比で秤量した。粉体をアルコール溶媒中で混合することで、CR細孔内にLi2Sが導入されたLi2S-CR複合体が得られた。この、Li2S-CR複合体、小粒径のLi6PS5X、および気相法炭素繊維(VGCF)を、50対45対5の重量比で混合して正極複合体とした。この構成を正極複合体の基本として、Li2Sの一部をLiIで置換したLi2S-LiI系活物質へと展開すると、初回放電容量が800 mAh/gを示した。さらに、Li2S-LiIを3対1の比率とした場合、100サイクルに渡り650 mAh/g以上の放電容量を維持することを確認した。 また、(iii) 金属リチウム負極複合体については、CRとリチウムを1対2.5の重量比で加圧熱処理することで、CR細孔内にリチウムが充填した複合体が得られることを確認した。作製した金属リチウム負極複合体は、全固体リチウム電池の負極として機能し、可逆的な充放電反応が進行することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の達成目標である3項目について以下の成果が上がっている. (i) 合成の多様性開拓について、アルジロダイト型Li6PS5X (X = Cl, Br)の単相が再現良く得られる、液相合成プロセスが確立できた。また、ハロゲン化物系Li3InCl6について、固相法および液相法で、1mS/cm以上の導電率を示す合成プロセスを確立した。 (ii) リチウム含有正極複合体について、Li2S活物質とLi6PS5Br系電解質の組み合わせに対し、固相法、液相法を駆使して正極複合体の特性向上を目指した。複合化プロセスの最適化に加えて、イオン導電および電子伝導を補助する助剤の添加により、100サイクルに渡り650 mAh/g以上の放電容量を維持する複合体を実現した。 (iii) 金属リチウム負極複合体について、カーボンレプリカ(CR)とリチウム金属粉末を混合し、加圧熱処理することでCR細孔内へのリチウム充填が可能であることを見いだした。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、合成の多様性開拓と全固体リチウム硫黄電池の正極複合体の最適化に的を絞り、長期サイクル安定性を実現するリチウム含有正極複合体が構築できた。ここで確立した合成技術や知見を基に、2024年度は、金属リチウム負極複合体の作製に注力する。特に、カーボンレプリカ(CR)の細孔径、CRとリチウムとの重量比率、混合条件などの最適化を推し進める。得られた金属リチウム負極複合体の構造評価、電気化学特性を行い、電気化学特性の向上に繋がる実験条件や複合体の構造因子を明らかにすることを目指す。
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