研究課題/領域番号 |
23K04909
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
嵯峨根 史洋 静岡大学, 工学部, 准教授 (70443538)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | マグネシウム金属 / 添加剤 |
研究実績の概要 |
2023年度は活性アルミナの酸性度がMgの析出溶解挙動に及ぼす影響を明らかにすべく、種々の酸性度を有する活性アルミナを用いてMg(TFSA)2/グライム系電解液への添加効果を調べた。その結果、酸性・中性・塩基性のいずれの活性アルミナを用いてもMg溶解の過電圧に改善が認められたが、その程度は酸性度によって異なり、塩基性が最も優れた添加効果を示した。Mg溶解の過電圧が大きい要因として、Mg2+イオンとの解離が不十分なTFSAアニオンの分解による抵抗被膜の形成が考えられる。従ってアルミナ添加はMg塩の解離を促進しているものと予想される。アルミナの酸性度の違いは表面の正電荷を帯びた酸点と、負電荷を帯びた塩基点の存在比の違いによるものである。塩基性活性アルミナが最も添加効果が高いことより、Mg2+イオンが塩基点に吸着することでMg(TFSA)2の解離が促進され、TFSAアニオンの還元分解が抑制されているものと考えられる。 そこでラマン分光法により、活性アルミナ表面におけるTFSAアニオンの配位状態の解析を行った。活性アルミナに極少量の電解液を加えて混錬した試料のラマンスペクトルを電解液バルクと比較すると、TFSAアニオン由来のピークの高波数シフトが確認された。Mg塩の解離が促進されると、電解液バルクよりも低波数シフトすることが予想されるが、逆の結果となった。一方、添加効果を示さないシリカ粒子を用いた場合、ピークのシフトは認められなかった。以上の結果より、活性アルミナにおける高波数シフトは、TFSAアニオンが活性アルミナと強く相互作用した結果であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画から実施内容に変更はないが、実施順を変更している。これはラマン分光法による活性アルミナの添加メカニズムの知見を得ることで、本来2023年度に実施予定であった酸・塩基点の定量評価が効果的になると判断したものであり、研究遂行のトラブルによるものではない。ラマン分光によるアニオンの配位状態についてはフリーアニオンとイオン対の形成割合の定量評価を検討しているが、ノイズが大きく十分な評価に至っていない。これについてはアルミナと電解液の混合割合の最適化、ラマン分光装置の減光・励起レーザー波長の変更などにより解決を図る。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きラマン分光法によるTFSAアニオンの配位状態を定量分析するとともに、研究計画通り固体の酸・塩基点の定量分析を行い、電気化学挙動との相関について詳細な分析を行う。中和滴定による酸・塩基点の定量評価に関して予備的な検討を行ったが、滴定に必要な時間が長く、また滴定結果の再現性が乏しいものであった。2024年度に本格的な滴定評価を行うが、進捗次第では加熱発生ガス質量分析に比重を置くことも検討する。 また、2025年度に実施予定の、無機添加系のMg析出溶解挙動のその場観察の準備として、測定用セルの開発を始める。Mgの析出方向に対して真横からの観察を予定しているが、無機添加剤との界面の観察が困難となる場合には、透明電極を基板として垂直方向からの観察とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
電解液用試薬の購入を予定していたが、保有している試薬から優先的に使用したこと、発注先メーカーにおいて合成にトラブルが発生しており、納期が大幅に遅れるとの連絡があったため、発注を次年度に実施することとしたため。 2024年度に改めて発注を行うことで研究に支障が無いよう努める。
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