研究課題/領域番号 |
23K04927
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
内田 紀之 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任助教 (20782204)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ウイルス / リポソーム / がん / ナノキャリア |
研究実績の概要 |
ウイルスの高い増殖能を利用してがん組織を効果的に死滅させるいわゆる“ウイルス療法”は、グレード4の進行度が高いがん疾患や脳腫瘍など、従来の手法では治療が困難ながんに対しても高い治療効果が期待できるため、現在大きな注目を集めている。しかしながら、ウイルスは血中内に投与すると免疫細胞によって除去されてしまう。このため、ウイルス療法の応用は侵襲性の高い、がん患部への直接投与に限定されてきた。より実用性が高い非侵襲的なウイルス療法の実現に向け、本課題では膜変形リポソームにウイルスを高効率で封入させることで血中におけるウイルスの安定性を向上させ、従来の問題点を解決する血中投与型ウイルス療法の実現を目指した。 本課題を実施する上でのモデルケースとして、ファージディスプレイ法に利用されるウイルスであるM13バクテリオファージウイルス(M13ファージ)が共存した状態で膜変形を誘導することでM13ファージの膜変形リポソーム内部へ封入を試みた。また、膜変形リポソームの構成要素を最適化することで、より高効率でウイルスを取り込む膜変形リポソームの開発を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロスケールのM13ファージを膜変形リポソームに取り込むことで、外部環境から隔離し、無毒化することに成功した。また、カチオン性のペプチドが親水基に導入された受容体を開発し、それをDOPC、DPPC、コレステロールの三成分からなるベシクルに導入したところ、より安価でウイルスを取り込む膜変形リポソームの開発に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はM13ファージを内包したリポソームの表面修飾による機能化を試みる。また、生体内への投与を視野に入れ、M13ファージを封入したリポソームの生体適合性を細胞毒性実験やマウス実験などにより評価し、ウイルス療法の実現に向けた足掛かりを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
リン脂質の試薬のキャンペーンのために費用を節約することができたため。 余剰分は来年度の試薬購入費に使用する予定である。
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