研究実績の概要 |
リゾホスファチジン酸(lysophosphatidic acid, LPA)は、約45年前に発見された生理活性脂質である。血液中のLPAはリゾホスファチジルコリン(lysophosphatidylcholine, LPC)からオートタキシン(autotaxin, ATX)によって生合成され、2つの構造異性体としてグリセロール骨格のsn-3位にリン酸基を持ち、sn-1位またはsn-2位に脂肪酸鎖が結合しているものが存在する。LPAには6種類以上の特異的受容体があり、それらを介してがんの増悪化、神経障害性疼痛など多彩な生理活性を示すことがわかっている。そのため、LPA合成酵素や受容体は薬剤開発のターゲットとして注目されており、LPAの構造の違いが受容体の親和性や活性の違いにどのような影響があるのか解明が進められている。これまでLPAの生理活性は1アシル型、2アシル型LPAを用いて広く研究されてきた一方、LPAの新規の構造異性体については研究が進められてこなかった。 ATXはLPA以外にもLPCから環状ホスファチジン酸(cyclic phosphatidic acid, cPA)を合成し、cPAにも様々な生理活性があることが解明されている。本研究ではcPAやcPAを経由して合成されると考えられる新規のLPA構造異性体(β型LPA)の生体内からの単離精製、生理活性解明を目指している。本年度においては、β型LPAの高速液体クロマトグラフの分離条件検討を行い、またcPAの誘導体2ccPAの新規の生理活性作用を明らかにした。
|