研究課題/領域番号 |
23K04958
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
八代田 英樹 帝京平成大学, 薬学部, 教授 (20311425)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | プロテアソーム / プロテアソーム阻害剤 / ケミカルバイオロジー / 出芽酵母 |
研究実績の概要 |
プロテアソームは真核生物において高度に保存されたタンパク質分解酵素複合体で、ユビキチンシステムと協調して細胞内での選択的なタンパク質分解を担っている。プロテアソームによるタンパク質分解は細胞周期の進行制御、DNA修復、転写制御、免疫応答、変性タンパク質の除去など様々な生命現象に関与し、このためプロテアソームは真核生物の増殖に必須の酵素となっており、プロテアソーム阻害剤ボルテゾミブは多発性骨髄腫に対する抗がん剤としてその有効性がすでに確立している。 現在、さらなるプロテアソーム阻害剤の創出が望まれており、研究代表者らは化学遺伝学的手法を用いて新規プロテアソーム阻害剤の取得を目指している。手順としてまず出芽酵母変異株ライブラリーに対する網羅的な化合物処理によって取得された各化合物に対する増殖プロファイルデータの中からプロテアソーム阻害剤であるボルテゾミブ処理を行った時と似たプロファイルデータが得られている化合物を3つ選択した。さらに細胞生物学的・生化学的な解析を行うことで26Sプロテアソームの阻害剤として機能するかどうか確認した。 その結果、2つの化合物において細胞内26Sプロテアソーム活性を阻害する効果が確認された。これらの化合物の構造式にボルテゾミブと似たものは含まれておらず、ボルテゾミブとは異なる作用機序を持つ新規プロテアソーム阻害剤の取得が期待できる。 さらにこれら2つの化合物のうち1つの化合物に対する耐性株を取得した。今後、これらの耐性株の耐性機構を調べることで化合物の作用機序を明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究協力者である理化学研究所環境資源科学研究センター分子リガンド標的研究チームによって理化学研究所の化合物ライブラリーNPDepoが出芽酵母変異株ライブラリーの増殖に対してどの様な影響を与えるかということが網羅的に調べられている。ボルテゾミブに対して変異株ライブラリーが示したプロファイルと似たプロファイルが得られたNPDepo化合物3つを選択し、出芽酵母の26Sプロテアソームに対する影響を調べた。その結果、ユビキチン化タンパク質の蓄積と26Sプロテアソーム活性阻害を引き起こす2つの化合物を取得することができた。得られた2つの化合物の構造式はボルテゾミブと全く異なるものであり、新しい作用機序によるプロテアソーム阻害剤開発に繋がる可能性がある。 次にこれらの化合物の作用機序を明らかにするため、化合物に対する耐性変異株の取得を試みた。その結果、1つの化合物に対して複数の変異株を得ることができ、耐性変異の中には潜性変異、顕性変異のいずれもが存在することがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に取得した26Sプロテアソーム活性阻害効果を持つ新規化合物に対する耐性株の解析を行う。耐性を付与する変異箇所の同定とその変異が細胞内にもたらす意義の解釈と作用機序のモデルを考え、さらにモデルが正しいかどうかを新しい変異株を作製して検証する。 またin vitroの系を用いて化合物が直接プロテアソーム活性を阻害しているのか検証する。化合物がプロテアソームに直接結合して作用しているとは考えられない場合、耐性変異株の解析から化合物のターゲットを探索するとともに、より直接的な方法として化合物ビーズを用いた生化学的手法によるターゲット探索を行う。細胞破砕液とセファロースビーズに化合物を固定した化合物ビーズを混合し、化合物に結合するタンパク質を単離精製後、結合タンパク質を質量分析で同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由は移動に伴う実験設備のセットアップに時間がかかり、新しい研究環境で行うことができる実験の種類が限られていたために消耗品購入費が抑えられたため。 2024年度中に研究環境をおおよそ整備完了する予定である。行うことができる実験の種類が増えるため、必要となる消耗品も増える。研究環境整備と2023年度には行うことが難しかった実験に使用する物品費に使用予定である。
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