研究課題/領域番号 |
23K04961
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
朴 昭映 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任准教授(常勤) (10628556)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | lipid droplet / 蛍光プローブ |
研究実績の概要 |
脂肪滴 (Lipid Droplet, LD)は、中性脂質コアとそれを囲むリン脂質で構成される細胞小器官であり、脂質の加水分解や貯蔵調節機能を中心に研究が行われてきた。最近、LDがマクロファージの老化に関連することや抗生物質・抗ウイルスタンパク質を蓄積することが報告され、LDを時空間的に可視化・分析するツールの開発や形態学的アプローチの確立が強く求められている。本研究では、様々なプッシュ・プル (push-pull) 型蛍光分子を設計・合成し、免疫細胞内のLDを可視化するツールを開発している。また、push-pull型蛍光分子が持つレシオメトリックな極性応答性に着目し、T細胞、B細胞、マクロファージを含む免疫細胞を中心として細胞環境変化に伴うLDのダイナミクスをマッピングし、LDを介する免疫システムの分子機構の解明に挑戦している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では, 細胞内脂肪滴 (Lipid Droplet, LD) を可視化する蛍光プローブのライブラリーを構築し、それを用いてLDを介する免疫システムの分子機構を解明する。現在までの進捗状況において、以下のように研究を実施している。 1) プッシュ・プル (push-pull) 型蛍光分子の設計と合成:ジメチルアミノ基やメトキシ基を電子供与体 (donor)、アセチル基などを電子受容体 (acceptor) として導入したプッシュ・プル型蛍光分子を設計・合成した。すべての誘導体は鈴木-宮浦クロスカップリングにより合成され、中程度から高収率で得られた。合成した化合物の特性は、1HNMR、13CNMR、およびESI-MSにより明らかにした。 2) 極性応答性蛍光プローブの光学物性評価:合成した分子の吸収・蛍光スペクトルや蛍光寿命など蛍光特性を検証した後、溶媒極性による蛍光スペクトルの変化を測定しソルバトクロミック色素としての光学物性評価を行った。 3) レシオメトリック蛍光プローブを用いた免疫細胞イメージング:プローブ分子を用いてT細胞、B細胞、マクロファージにおいて、イメージング実験を行なったどころ、明確にLDを染色することを確認している。
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今後の研究の推進方策 |
今回開発した蛍光プローブのTD-DFT計算を行い、化学構造と発光波長変化についてその相関を解析する。また、プローブ分子のソルバトクロミズムに着目し、T細胞、B細胞、マクロファージなど多様な免疫細胞に対するレシオメトリックイメージングの条件最適化を行う。免疫細胞の分化や老化過程におけるLDの変化をマッピングすることで、免疫細胞の運命とLDダイナミックの相関性を明らかにする。本研究で開発する蛍光プローブと分析技術が、免疫学分野に限らず、生物学全般に適用できるように基盤技術として方法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、様々なプッシュ・プル (push-pull) 型蛍光分子を設計・合成し、免疫細胞内のLDを可視化するツールを開発している。また、push-pull型蛍光分子が持つレシオメトリックな極性応答性に着目し、T細胞、B細胞、マクロファージを含む免疫細胞を中心として細胞環境変化に伴うLDのダイナミクスをマッピングし、LDを介する免疫システムの分子機構の解明に挑戦している。本年度は、様々なプッシュ・プル型蛍光分子の合成に成功し、合成したプローブ分子を用いてT細胞、B細胞、マクロファージにおいて、明確にLDを染色することを確認している。次年度からは免疫細胞を用いた実験が増えるため、細胞や培養液の購入に必要な費用を考慮して予算を企画している。
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