研究課題/領域番号 |
23K04962
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村井 稔幸 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (20311756)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 細胞・組織 / シグナル伝達 / 分子認識 / ケミカルバイオロジー / 相分離 |
研究実績の概要 |
細胞における「相分離」(phase separation)が様々な生命現象に関わることが報告され、近年注目されている。本研究課題の目的は、相分離を制御する天然化合物を起点として、がん・神経変性疾患について新たな創薬戦略を確立することである。細胞膜上では、脂質ラフト(lipid raft)または膜ラフト(membrane raft)と呼ばれる微小ドメインが形成され、細胞内外の情報変換の中心的部位として機能すると考えられている。本研究代表者は、がんの浸潤・転移に焦点を当て、脂質ラフトがそれらの現象において重要な役割を果たすことを見出し、生化学的な解析や顕微鏡を用いた解析などを通じてその分子機構を解明した。さらに、解析の過程で、脂質ラフトを標的とし、がん・神経変性疾患に対して抑制的に働く候補天然化合物を同定した。 本研究期間では、脂質ラフトの制御機構を理解する上で、「膜相分離」(membrane phase separation)に着目し、天然化合物の生体膜への直接的作用を明らかにした。2023年度においては、同定した天然化合物をリード化合物として細胞膜への直接的作用に基づいた構造展開をおこなった。具体的には、人工脂質系細胞膜モデルを構築し、当該化合物が相分離に与える作用について解析をおこなった。相分離を指標にした生体膜解析をおこなった。本研究課題の2023年度における研究実績は、がん・神経変性疾患の新規創薬戦略の情報基盤となり、ケミカルバイオロジー分野の進展に貢献できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度においては、交付申請書に記載した「研究の目的」および「研究実施計画」に沿って研究を実施し、十分な研究成果を得た。よって、おおむね順調に進展していると評価された。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度においては、2023年度に得られた成果を展開し、さらに構造活性相関を行う。生化学的手法や顕微鏡技術との組み合わせにより、細胞膜モデル系に対する効果と生細胞に対する効果とを統合した検討を進める。解析結果から化合物の合理的構造展開を行い、疾患の予防・治療への応用に向けた検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で新たな発見等があり、必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込み額と執行額は異なった。 研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。2024年度において当該研究費を合わせて使用することで、研究計画全体の達成に向けたより効果的な使用をおこなう。特に、新たに見出した分子の構造と機能の相関などを解明するための実験系の確立等に対して使用する予定である。
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