研究課題/領域番号 |
23K05005
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
諸星 知広 宇都宮大学, 工学部, 准教授 (90361360)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | クオラムセンシング / アシル化ホモセリンラクトン / 微生物農薬 / 非病原性A. vitis |
研究実績の概要 |
Allorhizobium vitisは、ブドウ根頭がん腫病の原因菌であるが、非病原性A. vitisは、その高い定着性から、ブドウ根頭がん腫病に拮抗作用を示す微生物農薬としての応用が検討されている。多くの植物病原菌は、アシル化ホモセリンラクトン(AHL)を介したクオラムセンシングにより、自身の病原性発現を制御しているが、AHLを人為的に分解することができれば、病原性発現を大幅に抑制することが可能である。本年度は、微生物農薬の候補である非病原性A. vitisから新規AHL分解遺伝子をクローニングし、その諸性質の解析を行うことを目的とした。 まず、AHLを添加した培地で非病原性A. vitisを培養したところ、培養後の上清からAHLが検出されなくなったことから、非病原性A. vitisはAHL分解活性を有することが明らかとなった。非病原性A. vitisのゲノム中には既知のAHL分解遺伝子と相同性を示す3つのORFが存在し、これらのORFをクローニングし、大腸菌に形質転換したところ、aiiVと命名した遺伝子を形質転換した大腸菌がAHL分解活性を示すことが明らかとなった。AiiVを発現、精製し、酵素活性を測定したところ、至適反応温度が30℃付近であり、50℃の熱処理によりほぼ失活することが明らかになった。最後に、aiiV遺伝子を広宿主範囲ベクターにクローニングし、AHLによりペクチナーゼ生産を制御するジャガイモ軟腐病菌Pectobacterium carotovorumに形質転換したところ、ジャガイモに対する腐敗活性が大幅に抑制されたことから、aiiVは植物病原菌の病原性抑制に効果的であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定に従って研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2年目以降は、緑肥として用いられているセスバニア植物に感染し、茎粒の形成と窒素固定を行うAzorhizobium属細菌を対象として、クオラムセンシング阻害効果を検証するとともに、緑肥による使用と病害抑止土壌の形成の両方を達成できる微生物製剤として利用可能か検討を行う。実験の推進方法は初年度に非病原性R. vitisで行ったものを踏襲することで、計画的かつ確実に研究を進める予定である。
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