研究課題/領域番号 |
23K05040
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
磯貝 章太 奈良先端科学技術大学院大学, 研究推進機構, 特任助教 (60735645)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | スレオニン脱アミノ化酵素 / 活性制御機構 / イソロイシン生合成 / 出芽酵母 / アロステリック制御 |
研究実績の概要 |
イソロイシン(Ile)は多様な生理機能を示すアミノ酸であり、食品・化粧品中の香気成分や次世代バイオ燃料の前駆体となる。酵母のIle生合成では、Ileのフィードバック阻害によるスレオニン脱アミノ化酵素(TD)Ilv1の活性制御によって生合成量が調節されるため、Ilv1の活性制御機構を解明することでIle生産性の向上が期待できる。様々な生物由来TDの解析から、阻害剤であるIleの結合によりTDの多量体構造が変化することが知られている。申請者は、Ilv1の2つの制御ドメインをつなぐリンカー領域中のヒスチジン残基(His480)のチロシン置換(His480Tyr)により多量体構造が安定化し、Ileによる活性制御が解除される可能性を見出した。そこで本研究では、His480を中心に、リンカー領域中の残基に対するアミノ酸置換の導入がIleによる活性制御や構造変化に与える影響を解析し、リンカー領域を介したTDの新たな活性制御機構の詳細を解明することを目的とした。2023年度は以下について実施した。 1.His480に対する各種アミノ酸置換の導入がTD活性に与える影響の解析 Ilv1の立体構造モデルにおいてHis480をチロシン以外のアミノ酸に置換した結果、His480Tyrと同様に多量体構造に影響を与える可能性のある2つのアミノ酸置換を同定した。そこで同定したアミノ酸置換を導入したIlv1変異体を実験室酵母で発現させたところ、期待通りにIleの生産性が向上した。 2.Ilv1の活性制御と多量体構造変化の関係性の解析 野生型および複数の変異型Ilv1を対象とした解析を予定しているため、まずは様々な条件における多量体構造の変化を簡便に解析することが可能なBlue-Native PAGE(BN-PAGE)を用いた解析系を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載した通り、Ile生産性向上に寄与するIlv1変異体を新たに2つ取得することができた。また、組換え酵素を用いたIlv1の活性制御と多量体構造変化の関係性の解析についても、BN-PAGEによる解析系の最適化を進めており、上記の進捗状況区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
取得したHis480のアミノ酸置換体について、Ileによるフィードバック阻害への感受性や速度論的パラメータを解析する。 また、BN-PAGEやゲルろ過クロマトグラフィーを用いた多量体構造の解析系を構築し、野生型およびHis480変異体Ilv1を対象に、活性制御と多量体構造変化の関係性について解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初はゲルろ過クロマトグラフィーによる解析を予定していたが、多数の変異体をより簡便に解析するため、本年度はBN-PAGEによる解析系を検討した。そのため、ゲルろ過クロマトグラフィーに必要な機器・試薬として計上した予算を次年度に繰り越した。 次年度以降にゲルろ過クロマトグラフィーによる詳細な解析を予定しており、必要な機器・試薬の購入に使用する予定である。
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