研究課題/領域番号 |
23K05056
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
吉田 久美 愛知工業大学, 工学部, 教授 (90210690)
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研究分担者 |
尾山 公一 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 主任技師 (80402460)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | アントシアニン / 黒ダイズ / フラべノール |
研究実績の概要 |
黒ダイズの種皮色素はシアニジン3-グルコシドで、その含有量は乾燥種皮あたり15 mg/g dried seed-coat にも達する。すでに代表者らは、未熟な緑色の黒ダイズ種皮を鞘から出して光と空気に暴露すると、通常鞘中では2ヶ月程度かかる登熟がほぼ24時間で進み、黒色になり、これが通常の登熟豆と同じシアニジン3-グルコシドの蓄積によることを見出した。また緑色種皮には、深見らが見出した3位が配糖化された2-フラべノール体が含まれる。研究代表者らは、これが極めて不安定で容易に空気酸化される化合物であることや、フラボノール配糖体を金属還元した際に生成する分子であること、さらには、鞘中の登熟においても、鞘外での急激な登熟においても、2-フラべノール体の減少とシアニジン3-グルコシドの増加が相関することから、大量に単純なアントシアニンを蓄積する植物の生合成過程においては、2-フラべノール体が中間体であると考え、その新しい機構について研究を開始した。 黒ダイズからアントシアニジン合成酵素遺伝子をクローニングして、独自に合成したシスロイコシアニジンなどを基質として酵素反応を行なったが、ほとんどシアニジン3-グルコシドを与えなかった。一方、カテキンを基質とするとむしろ、主にシアニジン3-グルコシドが得られることがわかった。しかし、2-フラべノール体はシアニジン3-グルコシドにならなかった。有機化学的には、2-フラべノール体の酸化反応は、B環4’位の酸化から進むのではないかと推測されるため、さらに酵素反応の機構を詳細に解明する目的で、カテキンのフェノール性ヒドロキシ基に何らかのアルキル基を導入して酸化が進まないような基質を設計した。現在合成中で、合成ができ次第、酵素反応を実施予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の吉田が、2023年4月1日より所属機関を移動し、研究室の引越しその他の業務たあったこと、及び、2022年度に研究協力者として実施に携わっていた大学院生が修了して、実験担当者が減ったことなどにより、従来の実施予定よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度よりANSの基質となり得るカテキン誘導体の合成を進めている。これが合成できれば、協力者の東北大学中山教授、和氣講師に酵素タンパク質との反応を実施依頼予定である。 さらに、黒ダイズの登熟過程におけるRNAをすでに取得済みであり、関連遺伝子の発現解析を実施予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の吉田が2023年4月1日に所属機関を移り、実験室の引越し業務が予定より遅れたため、実験遂行に遅れが生じて残額が生じた。 今年度は、分担者と密に連絡して研究推進を図る。同時に、共同研究を実施している東北大学の中山教授のグループとの連携を図り、研究打ち合わせを密に行なって、研究を推進する。
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