研究課題/領域番号 |
23K05058
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
鳥飼 浩平 九州大学, 理学研究院, 助教 (20456990)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | グリコシル化 / 保護基 / 立体選択的反応 / 隣接基関与 / アルコキシメチル基 / アルコキシプロピル基 |
研究実績の概要 |
本研究では,独自に開発した,2位にアルコキシアルキル基を有する糖供与体の立体選択的グリコシル化反応について,以下の3点に注目して,研究の更なる深化を計画した.①その高い反応性および立体選択性の起源を計算科学的に探る;②独自に開発した糖供与体のrelative reactivity value (RRV)を算出し,その結果をもとに何段階のワンポット連続グリコシル化が実現可能かを検証する;③Thorpe-Ingold効果による隣接基関与の促進を利用した1,2-trans選択的マンノシル化の開発. ①に関しては,本年は,研究協力者とともに計算に着手した.基本的には遷移状態や中間体を想定し,それらを通る反応経路を検索するという方針で進めることで合意し,例えばトリフラートイオンが関与するオキソカルベニウムイオンの生成,コンタクトイオンペアの生成等を想定して計算を行ったが,未だ経路を確定するには至っていない.現在のところ,様々な経路が入り乱れながら反応が進行しているのかもしれないと考えている. ②に関してはRRV測定候補化合物2つを取得することができており,現在更なる基質合成を進めている. ③に関しては,文献記載の方法ではアルコキシプロピル基が導入できず,条件の最適化に苦戦したが,ようやく2位にアルコキシプロピル基を有するマンノース供与体の合成に成功した. なお②と③は,有機合成化学の経験がほとんどない外国人留学生を教育しながら推進している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①の計算化学的アプローチについては,研究協力者とともに現在,反応の遷移状態と反応経路の探索を行っている.アルコキシメチルドナーの高い反応性を説明する直接的な答えには未だたどり着いていないが,1年目としては試行錯誤を繰り返しているだけで十分な進捗であると考える. ②のRRVの決定とその結果に基づく連続グリコシル化の限界への挑戦に関しては,現在RRVを決定する各種基質の合成が進んでいる(現在までに2つの化合物の合成を完了). ③の2位にアルコキシプロピル基を有するマンノース型糖供与体を用いた,1,2-trans選択的グリコシル化に関しては,半年以上の苦戦の末,基質の合成を達成し,1年目にしてグリコシル化の検討に移る準備を整えることが出来た. 以上のようにどの小課題も着実に進展していることから,「おおむね順調に進展している」と評価した.
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今後の研究の推進方策 |
①に関しては,研究協力者とともに案を出しながら進める.特に当初の想定とは異なるが,アルコキシアルキル基が隣接基関与しない系についても検討したい. ②に関しては,基質合成のスピードアップを図りたい.またHPLCを用いてRRVを計測する準備として,RRVを求める測定化合物と基準化合物のHPLCによる分離や,生成物の保持時間の測定等を行っていきたい. ③に関しては,実際に2-O-アルコキシプロピル基質をグリコシル化反応に付し,マンノシル化の1,2-trans選択性が,2-O-アルコキシメチル基質よりも向上するかどうかを確かめる.2-O-アルコキシプロピル基質は,2-O-アルコキシメチル基質に比べて酸性条件に不安定であることが予想されるので,ブレンステッド酸でうまくいかない(2-O-保護基の除去が優先してしまう)場合には,よりかさ高いルイス酸であるインジウムトリフラートなどを用いて検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
直接経費140万円のうち,10万円程残ったが,全体の7%程にすぎないので特に理由はない.次年度の物品費,もしくは旅費に回す.
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