研究課題/領域番号 |
23K05079
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
井上 博文 東京農業大学, 応用生物科学部, 准教授 (10639305)
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研究分担者 |
森本 洋武 東京農業大学, 応用生物科学部, 助教 (00965577)
福島 穂高 東京農業大学, 生命科学部, 准教授 (60645076)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 鉄欠乏 / 脳機能 / トリプトファン / 神経伸長 |
研究実績の概要 |
これまでに我々は、幼若期(被験動物)における鉄欠乏状態が骨脆弱化の誘導、細胞老化亢進や細胞機能に多様性を付与するタンパク質のメチル化状態が低下することを報告している。加えて、鉄欠乏状態が活性型ビタミンD3やビタミンC律速酵素SMP30発現低下を惹起することも明らかにしている。興味深いことに、脳機能低下が認められるうつ病患者は、鉄をはじめとしたミネラル類、ビタミンD3やビタミンCといった栄養素が不足していることも明らかにされつつある。しかしながら、鉄摂取不足により脳機能の低下が増加するのか?または脳機能の低下を患った結果なのか?については明らかではない。そこで本年度は成長期における鉄欠乏食投与が脳機能に関わるタンパク質が変化するのかについてショットガン解析を用いて網羅的に解析を行った。 被験動物として、4週齢のICR雄マウスを用い、正常食(CTL)と鉄欠乏群(ID)の計2群に分け、4週間の飼育観察を行った。飼育期間終了後、血中ヘモグロビン濃度の著しい低下、心臓および脾臓重量の有意な増加を確認し、鉄欠乏モデルであることを確認した。また、脳重量および脳内鉄濃度について解析した結果、2群間に有意な差を示さなかった。続いて、脳内タンパク質の変動をLC-MS/MSベースのプロテオミクス解析で行った結果、CTL群に比し、ID群で196因子の発現が減少(log2FC≦-0.5)を示した。特に有意に発現が減少した因子として、鉄がタンパク質活性に関連する因子や脳神経発達に関連する因子であった。加えて、トリプトファン代謝に関するタンパク質発現の多くがID群で減少していることも併せて明らかにした。 以上より、鉄欠乏状態において脳内鉄濃度に変化は認められないものの、脳機能に影響を及ぼすタンパク質が有意に低下するプロファイリングを示し、鉄欠乏状態が脳機能に影響を及ぼす可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究当初は鉄欠乏食摂取した母親から生まれた仔マウスの脳内タンパク質を解析する予定であった。しかしながら、鉄欠乏食を摂取した母親の発情期を見極めることが難しく、本年度は成長期における鉄不足に焦点を変更した。当初計画からの変更は、この一点のみで、概ね順調に進展している。また、成長期における鉄欠乏と脳内変動タンパク質の結果は現在、論文投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、母親の鉄欠乏状態から生まれてくる仔マウスの脳機能解析を行うこととする。
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