研究課題/領域番号 |
23K05086
|
研究機関 | 愛知県衛生研究所 |
研究代表者 |
舘 昌彦 愛知県衛生研究所, 衛生化学部医薬食品研究室, 主任研究員 (60744274)
|
研究分担者 |
近藤 文雄 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (40450861)
今西 進 名城大学, 薬学部, 准教授 (00757502)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 残留農薬分析 / 農薬代謝物 / LC-MS/MS |
研究実績の概要 |
農薬は、農薬原体(代謝を受けていない物質)のみに残留農薬基準が定められているものが多く、流通する農産物中における農薬代謝物の存在実態は十分に把握されていない可能性が考えられる。本研究では、既存物質及びその構造類似物質の探索を可能とするLC-MS/MSスペクトルの階層的クラスタリングを応用し、農薬原体だけでなくそれら代謝物のスクリーニング法を構築し、流通食品中における農薬代謝物の存在実態を明らかにすることを目的とする。当研究室では、食品中の残留農薬検査にゲル浸透クロマトグラフィー及び固相カートリッジ等の各種分離技術を取り入れた農薬一斉分析法を用いているが、操作煩雑で時間がかかるうえ、多くの有機溶媒を必要とする。そこで、令和5年度は、簡易で迅速な分析法を確立するため、LC-MS測定条件と試料中からの前処理法の検討を行った。ネオニコチノイド系及び有機リン系等の農薬原体及び一部代謝物を含む50種を選出し、それら対象物に対し条件検討を行った。その結果、LCカラムにC18、移動相にアセトニトリル及び5 mM酢酸アンモニウムを用いたグラジエント溶出により、代謝物を含め高感度に測定できる条件を確立した。また、前処理にアセトニトリル、クエン酸三ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、塩化ナトリウム及び無水硫酸マグネシウムによる抽出と、ろ過膜精製を組み合わせることで、農薬原体だけでなく代謝物に対しても簡易かつ高精度に定量分析できる方法を確立した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
農薬の一斉分析法は概ね確立することができたが、令和5年度中に実施するはずであった階層的クラスタリングに用いるスペクトルライブラリーの構築に予定より多くの時間を要しているため。
|
今後の研究の推進方策 |
農薬の一斉分析法は概ね確立することができた。今後、本分析法の堅牢性を確認するため、様々な食品に対して評価を行っていく。また、本分析法を用いて上記50種のスペクトルライブラリーの構築を実施する。さらに、農産物を用いた農薬の代謝実験等を実施する。調製試料をLC-MS/MS測定したのち、MS/MSスペクトルの階層的クラスタリングにより農薬代謝物を探索する。今後実態調査を行うために、得られた代謝物のスペクトルデータ(未知を含む)等ライブラリーの拡充を行っていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた実験まで進んでおらず、有機溶媒及び分析カラム等の消耗が少なかった。次年度以降に、実験を実施するため、それら消耗品の購入に充てる予定である。
|