研究課題/領域番号 |
23K05115
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
中西 尚子 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 専攻医 (40843446)
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研究分担者 |
福井 道明 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30247829)
濱口 真英 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80350883)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 腸管上皮幹細胞 / 水溶性食物繊維 / 腸内代謝産物 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は水溶性食物繊維由来の腸内代謝産物が有する腸管上皮幹細胞機能の制御と栄養吸収動態の改善機構を明らかにすることである。 2023年度は腸管幹細胞からのlineage tracingが可能なマウスの樹立をおこなった。凍結精子(Lgr5-EGFP-ires-creERT2およびRosa26-tdTomato)より胚作出をおこない、それぞれの個体復元をおこなった。Lgr5-EGFP-ires-creERT2とRosa26-tdTomatoマウスを交配しLgr5-EGFP-ires-creERT2;Rosa26-tdTomatoマウスを作出した。同マウスでは、Lgr5陽性腸管幹細胞はGFPラベリングされ幹細胞数や分布を評価できるとともに、タモキシフェンの投与により幹細胞、その子孫細胞がTomato陽性となることで幹細胞の子孫産生能(細胞系譜解析)を検討できる。作出したマウスにタモキシフェン2mg/1匹/日の投与を2日間おこない、その3日後にサクリファイスした空腸組織の抗RFP抗体による免疫染色をおこなったところ、陰窩から絨毛にかけて伸びるTomato陽性細胞を確認できた。 さらに、8週齢のC57BL/6Jマウスを用いて、通常食、高脂肪高ショ糖食(HFHS)、イヌリン含有高脂肪高ショ糖食(イヌリンHFHS)を8週間給餌した。それらのマウスの小腸組織のHE染色をおこない、絨毛と陰窩の長さを比較検討した。イヌリンHFHSでは空腸の絨毛は平均445umでHFHSの307umと比較し長いことが確認された。十二指腸や回腸では有意差を認めなかった。このように水溶性食物繊維投与による小腸の形態学的変化を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
樹立を計画していた腸管幹細胞からのlineage tracingが可能なLgr5-EGFP-ires-creERT2;Rosa26-tdTomatoマウスの作出が完了し、表現型を確認することができた。また、水溶性食物繊維であるイヌリン給餌モデルにおける腸管組織の評価についても実験遂行ができたため、概ね順調な進展と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
樹立したLgr5-EGFP-ires-creERT2;Rosa26-tdTomatoマウスを用いて、高脂肪高ショ糖食(HFHS)およびイヌリン+HFHS給餌モデルを作成し、腸管幹細胞からの分化能を比較検討する。給餌後の門脈血の分岐差アミノ酸濃度をガスクロマトグラフィーを用いて測定し、アミノ酸吸収能についても評価する。また、空腸におけるRNAシークエンスをおこない機能評価をする。 Lgr5-EGFP-ires-creERT2;Rosa26-tdTomatoマウスの空腸からオルガノイドを作成し、培養をおこなう予定としている。コハク酸溶液3mM・プロピオン酸溶液5mMを加え、腸内代謝産物の直接作用を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスの繁殖力がやや低いこととガスクロマトグラフィーのメンテナンスのため、一部の実験が年度内完了が困難となったため次年度に繰り越す。
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