研究課題/領域番号 |
23K05119
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
古賀 仁一郎 帝京大学, 理工学部, 教授 (70649912)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | グルコセレブロシダーゼ / グルコシルセラミド / イネ |
研究実績の概要 |
私たちの先行研究では、グルコシルセラミドからセラミドに変換する新規のグルコシドハイドロラーゼファミリー1(GH1)グルコセレブロシダーゼが種子植物において普遍的に存在し、イネにおけるグルコセレブロシダーゼ活性の大部分を占めていることを見出した(Koga et al. (2021) J. Biol. Chem. 297, 101236)。本研究の目的は、そのGH1グルコセレブロシダーゼ遺伝子を欠損させることによって、グルコシルセラミドが蓄積したグルコシルセラミド高含有米を作出することである。 2023年度は、(1)イネのGH1グルコセレブロシダーゼであるOs3BGlu6とOs10BGlu34のTos17トランポゾンによる2重欠損イネ(日本晴)を温室で栽培し、そのイネ種子を採取した。小型精米機により米ぬか(果皮と胚芽)と白米に分け、白米に含まれるグルコシルセラミド含有量を私たちが確立したLC-MS/MSによる分析方法(Yumoto, et al. (2021) Biosci. Biotech. Biochem. 85, 205)で測定した。その結果、GH1グルコセレブロシダーゼ2重欠損イネ(日本晴)の白米に含まれるグルコシルセラミド含有量は、野生株に比べて多かった。一方で、GH1グルコセレブロシダーゼ2重欠損イネ(日本晴)と野生株とにおいて、イネ種子の稔実率や収量における差は認められなかった。 (2) 日本晴はコシヒカリに比べて食味が劣っていることが知られている。そこで2023年度は、より食味の優れたイネを作出するため、Os3BGlu6とOs10BGlu34の2重欠損イネ(日本晴)とコシヒカリを交配させた。交配で得られた種子を栽培し、自家受粉させ、得られた種子から、PCRによる遺伝子解析によって、7株のOs3BGlu6とOs10BGlu34の2重欠損イネを選抜した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
仮説通り、GH1グルコセレブロシダーゼ2重欠損イネ(日本晴)の白米に含まれるグルコシルセラミド含有量が野生株に比べて多いことを確認できたこと、さらには、食味向上のために、GH1グルコセレブロシダーゼ2重欠損イネ(日本晴)とコシヒカリとの1回目の交配に成功したことから、研究計画を予定通りに実施することができた。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1) GH1グルコセレブロシダーゼであるOs3BGlu6とOs10BGlu34の2重欠損イネ(日本晴)を圃場で栽培し、種子を採取する。その白米に含まれるグルコシルセラミド含有量を測定することによって、圃場で栽培しても、温室で栽培した場合と同じように、GH1グルコセレブロシダーゼ2重欠損イネ(日本晴)の白米に含まれるグルコシルセラミド含有量が野生株に比べて多いかを調べる。また、白米を炊飯した場合でも、グルコシルセラミドが分解されることなく、白米中の高いグルコシルセラミド含有量が維持されているか、さらには、GH1グルコセレブロシダーゼ2重欠損によって、食味が変化しないか等の実用性を検討する。 (2) 2023年度で作製したOs3BGlu6とOs10BGlu34の2重欠損イネ(日本晴)とコシヒカリとの交配イネに、さらにコシヒカリを交配させる。その後、交配させたイネを自家受粉させた種子から、PCRによる遺伝子解析によってOs3BGlu6とOs10BGlu34の2重欠損イネを選抜する。これらの工程を繰り返すことによって、コシヒカリの食味に近いGH1グルコセレブロシダーゼ2重欠損イネを作出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存の設備でイネ種子からグルコシルセラミドを抽出したことによって、費用がかからなかったため、次年度使用額が発生した。既存の設備ではグルコシルセラミドの抽出効率が極めて悪いため、発生した次年度使用額を用いて、効率的にグルコシルセラミドを抽出できる機器を購入する予定である。さらに効率よく研究を進めるため、2024年度請求額を用いて、電動もみすり機、小型精米機、LC-MS/MS用のカラム、PCRに使用するキット等を購入する予定である。
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