研究課題/領域番号 |
23K05129
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
毛利 晋輔 立命館大学, 生命科学部, 助教 (60836625)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 食品機能性 / 食品機能性成分 / 調理 / 抗炎症 / メタボローム解析 |
研究実績の概要 |
実際の食生活において、食品をそのまま摂取することは少なく、調理を介する頻度は極めて高い。つまり、真の食品機能性の利活用には、調理に伴う食品機能性成分変化の解明が不可欠である。ところが、これまでの研究は、成分変化の一端に由来するものが殆どであり、俯瞰的な視点から調理に伴う食品機能性成分変化を検討し、系統的・統合的な理解を試みた例は僅かである。本研究では、網羅的成分評価により、調理に伴う食品機能性成分変化について、含有成分全体像に着目した研究を行う。得られた結果から、調理によって「食品中の多彩な成分にどのような変化が生じるのか?」「上記変化が食品機能性にどの程度寄与するのか?」について、調理と食品機能性成分変化の関係性を体系化し、基盤的知見の構築を試みる。 本年度は、機能性変化が生じる調理と食品の組合せについて、スクリーニングを行った。基盤的研究の観点から、調理として、茹でおよび電子レンジによる加熱、食品として、一般的な野菜を選択した。調理前後のサンプルにおける機能性として、LPS刺激したマクロファージ様細胞RAW264に対する抗炎症作用を評価したところ、上記の条件において、有意に抗炎症作用が上昇する組合せは見出されなかった。今後は、さらに食品の探索範囲を広げるとともに、加熱時間や加熱温度、調理時の食品サイズ、ミキサー処理の有無などの調理条件を追加し、機能性変化が生じる調理と食品の組合せを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、初年度中に、機能性変化の生じる調理と食品の組合せについて、スクリーニングを完了させる計画であった。しかしながら、現在までに、機能性変化の生じる調理と食品の組合せを特定できておらず、次年度も食品および調理の条件を拡大して、スクリーニングを継続することとした。一方で、本研究課題の目的は、調理と食品機能性成分変化の関係性を体系化し、基盤的知見の構築することであり、食品および調理の条件拡大によって得られる結果は、有益なものである。以上のような理由から、進捗状況として遅れが生じているが、研究の質という点では、当初の計画より向上が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
機能性変化の生じる調理と食品の組合せについて、条件を拡大してスクリーニングを継続する。組合せの選定後、調理前後のサンプルにおいて、メタボローム解析による超精密質量測定、データ解析(組成式・ピーク強度・溶出時間など)、DataBase検索(KEGG・PubChemなど)を行い網羅的に成分推定を行う。また、上記メタボローム解析と同分析条件によりHPLC精製画分を作製し、取得した全画分において機能性を評価することで、網羅的に機能性成分の溶出時間を特定する。得られた網羅的な含有成分情報と網羅的な機能性情報を溶出時間を指標に結合し、網羅的成分評価を行う。 網羅的成分評価について、調理前後の比較を行うことで、成分変化(創出される・維持される・消失する成分など)および機能性変化(亢進・維持・減弱、食品全体における寄与率など)の全体像を解明する。また、当該全体像について、系統的(化学構造・代謝経路など)に整理区分することにより、調理に伴う食品機能性成分変化の統合的解析を行う。加えて、変化成分の代謝経路マッピングから酵素反応的な成分生成機構を、変化成分の化学構造クラスタリングから化学反応的な成分生成機構を特定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、初年度において、機能性変化を生じる調理と食品の組合せに関するスクリーニングを完了し、選定された組合せについて、ELISAやウエスタンブロッティングなどを用いた詳細な機能性評価を行う予定であった。しかしながら、上記組合せを見いだせなかったため、当該機能性評価は持ち越され、次年度使用額が生じた。
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