研究課題/領域番号 |
23K05133
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
木下 英樹 東海大学, 農学部, 准教授 (50533288)
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研究分担者 |
下里 剛士 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (00467200)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ムーンライティングプロテイン / グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素 / GAPDH / GroEL / マクロファージ / 免疫 |
研究実績の概要 |
近年、乳酸菌は宿主に対し有益な健康効果を示すプロバイオティクスとして注目されている。乳酸菌の菌体表層には多数のタンパク質が発現しており、プロバイオティクスとしての機能に重要な役割を果たしている。ムーンライティングプロテイン(moonlighting protein:MP)もその一つであり、様々な細菌において腸管付着、血栓溶解、重金属吸着、免疫応答などの多機能性を示すことが報告されている。乳酸菌のムーンライティングプロテインは腸管付着因子としての働きが良く知られているが、腸管定着において重要だと考えられる腸管免疫回避については十分理解されていない。そこで本実験では代表的なムーンライティングプロテインであるグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)とGroELに着目し、マクロファージ細胞に対する免疫調節作用を評価した。その結果、リポ多糖(LPS)により刺激していないマクロファージ細胞では、サイトカイン産生誘導が見られた。一方で、LPS刺激マクロファージでは過剰な免疫応答を起こさなかった。このことから乳酸菌のGAPDHおよびGroELは免疫賦活化作用のほか、免疫調節作用がある可能性が示された。また、様々な種のGAPDHの立体構造をin silicoで比較したところ病原菌と乳酸菌では構造が大きく異なることがわかった。そのため、病原菌と乳酸菌のMPは異なる働きをしている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画ではGAPDHの免疫応答を調査するというものであったが、GroELも含め上記の通り解析することができた。また、立体構造のin silico解析も実施し、高次構造から機能性を考察することの重要が分かり、今後の研究に繋がる有益な情報を得ることができた。以上のことから研究は概ね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は主に下記の二点について実施していく。 ①乳酸菌がムーンライティングプロテインを介して宿主の腸管免疫にどのような影響を与えているのか、腸管への定着に利用しているのかを検証する。②生物種ごとのGAPDHの作用に違いがあるのかを評価し、乳酸菌のGAPDHの機能性を特徴づける。具体的に、①ではマウスへの乳酸菌およびムーンライティングプロテインの投与試験を行い、定着性、免疫応答(サイトカイン産生、抗体産生等)を解析する。また、腸内菌叢解析を行うと共にGAPDH投与によって産生誘導された抗体を用いて様々な腸内細菌への応答を評価し、ムーンライティングプロテインの機能性について解析する。②では、病原菌のムーンライティングプロテインのクローニングおよびタンパク質発現大腸菌を作出する。また、病原菌におけるムーンライティングプロテインの免疫応答をマクロファージ細胞で評価し乳酸菌との比較を行う。 以上の研究により、乳酸菌がムーンライティングプロテインを使いどのように腸管での定着を実現しているのかを腸管付着性、免疫応答に着目し明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
膜小胞に含まれるRNAについて、RNA-seqを用いて解析を進める予定であったが、膜小胞の調製方法を変更する必要が生じ、それらを検討する時間が必要であったため、次年度にその予算を回すこととした。また、共同研究者との対面での打ち合わせを計画していたが、お互いの都合がつかず、オンラインでの打ち合わせに切り替えたため旅費が少なくなった。
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