研究課題/領域番号 |
23K05147
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
安田 恭大 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 助教 (40816344)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | プロテオミクス / 相分離生物学 / 近傍分子ラベル / ストレス顆粒 / G3BP1 / TIA-1 / hnRNPA2B1 / Syncrip |
研究実績の概要 |
本研究では、細胞へのストレスに応答してストレス顆粒がリクルートするタンパク 質の経時的変化を観測し、時間と共にSGにリクルートされる各タンパク質、あるいはこの時空間的に制御された生体分子の集積機構(オーダー ドリクルートメント)そのものが持つ生物学的役割を明らかにする。 本年度はストレス顆粒を対象に、当初予定していたHalo-tagリガンドを用いた分子架橋方法と、さらにTurboIDを用いた近傍分子のビオチン化アプローチを加えた解析を進めた。ベイトにはTIA-1とG3BP1を選択した。顆粒の形成・消失過程で経時的にサンプリングし、TIA-1あるいはG3BP1と相互作用する、またはごく近傍にいる分子の全体像と時間的変化を捉えた。結果として、1)ストレス顆粒の中心的因子であるG3BP1との相互作用分子とより外側に存在する分子を繋ぐ、”ハブ”的役割を担う可能性のあるタンパク質を同定、2)ストレス顆粒の形成に際して構成因子のリクルート順序を決定するのに重要なタンパク質を同定、3)ストレス顆粒の消失に必要なタンパク質の同定、4)新規のストレス顆粒構成因子の同定、に成功した。 それぞれの、同定したタンパク質について詳細な機能解析を進めている。 これらの成果は、本研究アプローチがストレス顆粒形成・消滅にかかる構成要素変化と、さらにその中でも重要な因子を突き止めることを可能にしていることを示す。また、新規のストレス顆粒構成因子を同定できていることから、これまでにない精度でストレス顆粒の実態を明らかにできていると言える。 また、それらの発見をもとに、構成因子の精製タンパク質発現系の確立にも着手した。現在は個別のタンパク質の発現系改良を進めており、in vitro再構成に向けての準備を着々と進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定であるHal-tagリガンドを用いた分析に加えて、それよりも反応半径の大きな近傍分子ビオチン化を用いた別アプローチを併用することで、ストレス顆粒構成因子についてより空間的に詳細なデータを得ることができた。そこから、オンラインデータベースやMCC解析などのネットワーク解析を駆使し、それらの分子同士の空間的つながりを予測したモデル作成に着手している。当初予定していなかったアプローチを加えることで今後進めていく予定であるin vitro再構成系の確立を見据えて、非常に重要なデータを取得することができたため、計画以上の進捗であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
実績の概要に記した、1)ストレス顆粒の中心的因子であるG3BP1との相互作用分子とより外側に存在する分子を繋ぐ、”ハブ”的役割を担う可能性のあるタンパク質を同定、2)ストレス顆粒の形成に際して構成因子のリクルート順序を決定するのに重要なタンパク質を同定、3)ストレス顆粒の消失に必要なタンパク質の同定、4)新規のストレス顆粒構成因子の同定、の4つの発見について、それぞれの同定したタンパク質の発現操作や機能操作により、それぞれのタンパク質がストレス顆粒の形成・離散についてどのように、またどの程度機能しているのかを解析する。 また、プロテオミクスデータをもとにしたタンパク質ネットワークマップの作成と、精製タンパク質作製を進め、in vitro再構成系の確立を進める。
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