研究課題/領域番号 |
23K05150
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研究機関 | 秋田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
クロフツ 尚子 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (30583330)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | イネ / 澱粉 / アミロペクチン / スターチシンターゼ |
研究実績の概要 |
澱粉の主成分であるアミロペクチン鎖を伸長する3種類の主要なスターチシンターゼ(SSI・SSIIa・SSIIIa)の役割と相補作用を明確にし、(1) 澱粉の蓄積に必須なSSアイソザイムはどれか、(2) どのSSアイソザイムがどのような構造のアミロペクチンを形成し、その結果、食味や消化性にどのような変化をもたらするのかを明らかにする。そのため、2023年度は以下の3種類の各SSアイソザイムが欠損したイネ二重変異体を育成し、その完熟種子を用いて澱粉構造解析を行った。 先行研究ではSSIとSSIIIaが欠失し、SSIIaの活性が低下すると不稔になったが、本研究で育成したいずれの二重変異体も稔実したことから、SSI・SSIIa・SSIIIaのいずれかが種子の形成に必須であることが明らかになった。また、各二重変異体の澱粉構造解析より以下のことが考えられる。 ①SSIのみが活性をもつss2a ss3aはアミロペクチン短鎖(DP8-12)が増加し、長鎖(DP>30)が減少した。これは、枝作り酵素が形成したDP6-7の分岐鎖をプライマーとして、SSIがDP8-12へ伸長したことを示唆している。また、アミロペクチン長鎖が大幅に減少していたことから、野生型ではSSIIIaが主に担う長鎖合成の一部をSSIIaが相補している可能性が考えられる。 ②SSIIaのみが活性をもつss1 ss3aはアミロペクチン短鎖(DP7-10)が減少し、DP12-24が増加した。このことからSSIIaはSSIの働きを相補し、枝作り酵素が形成した枝をプライマーとして伸長することが可能であると考えられる。 ③SSIIIaのみが活性をもつss1 ss2aはアミロペクチン短鎖(DP6-8)が増加した。このことから、SSIIIaは枝作り酵素が形成する短い枝を伸長することができないと推測できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は洪水に見舞われ、登熟期間が酷暑であったが、最終年度の食味官能試験に必要な種籾を確保することができたから。 また、当初計画した通り、澱粉構造解析も行うことができたから。
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今後の研究の推進方策 |
極端な高温は澱粉構造にも若干影響することが知られているため、当初の計画通り2024年度も澱粉構造解析を行い、環境的要因とSSアイソザイムの欠失による影響を明確にする。 2023年度は洪水や酷暑により澱粉構造に影響した可能性があるため、2024年度に得られた結果と大きな差異が見られた場合には2025年度も澱粉構造解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文を投稿中であり、年度末までに受理された場合に投稿費用の支払いが生じる可能性が考えられたため、残しておいたが、リバイスが必要になり、次年度に投稿することになったため。
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