研究課題
本研究では、申請者が炭疽病菌において開発したCRISPR-Cas9を用いた高効率遺伝子法を用いて、病原性に寄与する二次代謝物生合成酵素遺伝子NRPS5の機能や生産物を解明することを目的としている。2023年度には、CRISPR-Cas9を用いた高効率遺伝子を炭疽病菌に適用した2本の原著論文が受理され、掲載に至った。また、炭疽病菌の二次代謝物生合成酵素遺伝子クラスターの解析を進め、2024年度中に投稿予定である。さらに、本研究を加速させるために、より簡便な形質転換技術の開発にも成功した。NRPS5は13個の遺伝子からなる二次代謝物生合成クラスターの一部であり、これらの遺伝子は同一の二次代謝物の生合成に寄与する可能性が示唆されている。そのため、これらすべての遺伝子についても、NRPS5と同様に遺伝子破壊株を作成し、表現型への影響を検証する必要がある。10を超える多数の遺伝子破壊に要する時間と労力を低減するために、従来の相同組換法を用いたドナーDNAの作成が不要な新たな手法を開発した。この新たな手法はco-editingと名付けられた手法であり、形質転換株の薬剤による選抜を可能にする遺伝子導入と並行して、CRISPR-Cas9を用いて任意のゲノム上の標的DNA領域に二重鎖切断を引き起こし、donor DNAを用いずに変異を導入する。この手法により、一つの遺伝子破壊に要する労力を大幅に低減することが可能となった。
1: 当初の計画以上に進展している
本課題に関わる原著論文が出版されたため。
NRPS5遺伝子が生合成する二次代謝物およびその生合成過程において、NRPS5と同じ二次代謝物生合成遺伝子クラスター内の修飾酵素等の同定が非常に重要である。2023年度に炭疽病菌で開発した遺伝子破壊手法を用いて、次年度の優先課題としてNRPS5と同一の二次代謝物生合成に関与する遺伝子候補を絞り込むことを目指す。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
New Phytologist
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