研究実績の概要 |
本課題では、8月上旬播種であっても十分な栄養成長量を確保できる新しいダイズエコタイプ(生態型)の作出に必要な、基本栄養成長期間を制御する遺伝子を明らかにし、その遺伝子を導入した系統の育成と評価を目的としている。新規LJ(Long Juvenile)形質を制御する遺伝子座を明らかにするために、九州地方で多く栽培されるフクユタカ(FUK)と、晩生品種Karasumame_(Naihou)(PGC173), Local_Van_(Tegineng)(PGC182), Miss_33_Dixi(PGC191)を両親とした3種類の分離集団を育成した。これらのF2種子を佐賀大学農学部圃場に短日条件下(2023年7月20日播種)で栽培し、F2分離集団を3集団作成した。分離集団を構成する個体数はFUK×PGC173系統が197個体、FUK×PGC182系統が91個体、FUK×PGC191系統が168個体であった。すべてのF2集団の開花期は連続的な分布を示した。3種類のF2分離集団の開花時期と各遺伝子座の遺伝子型を対象にした回帰分析を行った。J,Tof11,Tof12,E1La,E1Lb,E9,E10の7遺伝子座を対象に分析を行い、LJ形質に関わる染色体領域はE9,E10,Tof11,Tof12の近傍に存在していることが明らかになった。各遺伝子座における晩成型品種の持つ対立遺伝子の効果は、E9で2.9日(p<0.001)、E10で1.1日(p<0.01)、Tof11で1.8日(p<0.001)、Tof12で2.2日(p<0.001)であった。上記の遺伝子座による寄与率は19.1%であり、未同定の遺伝子が存在することが示唆された。遺伝子座ごとの寄与率は、E9が8.7%、E10が1.0%、Tof11が5.0%、Tof12が5.8%であった。E9が特に開花日数に対して関与していることが示された。
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