研究課題/領域番号 |
23K05178
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
矢部 志央理 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 作物研究部門, 主任研究員 (60767771)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | アンバランスデータ / 遺伝子―環境間交互作用 / QTL検出 / イネ |
研究実績の概要 |
本研究課題では,将来の環境に適応した品種の開発に貢献するため,イネの多環境栽培データをモデルケースとし,遺伝子の環境応答(G×E)を考慮したQTL検出法を開発する.作物栽培で得られるデータを想定し,アンバランスな構造を持つデータに対して頑健な統計手法の開発を進め,利用可能な全ての情報を生かしたQTL検出法の開発を目指す.このため,今年度は,遺伝子―環境間交互作用(G×E)を考慮した新規QTL検出法の開発の一つとして,作物モデルと統計遺伝的解析法を組合せた新規手法の開発を実施した. 現在までにも,G×Eを考慮したQTLの検出法が提案されているが,複数の系統および環境に対する解析において,出力される結果の安定性の担保や,解析に適する均一な条件で得られたデータの取得の難しさなどの問題を抱えてきた.今年度は,作物モデルと統計遺伝モデルを組合せた方法について,アンバランスデータの解析においても頑健な新規手法を提案し,QTL検出結果の信頼性について水稲の出穂データを用いて検証した.結果,提案手法は,構造の異なる2つのデータにおいても安定した解析結果が得られ,既存手法よりも頑健であることが示唆された. なお,今後の統計的手法をメインとした手法の開発に向け,利用するイネの栽培データの構造(品種や年次別のデータ数のバラツキなど)を確認し,検証に向けた準備を進めている.また,真値のわかるデータでの検証を実施するために,シミュレーションによる栽培データの構築について検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多環境栽培データをモデルケースとした遺伝子の環境応答(G×E)を考慮したQTL検出法を開発するため,全期間を通して以下の項目について計画している:(1)G×Eを考慮した新規QTL検出法の開発,(2)開発手法の実データを用いた検証,(3)開発手法のシミュレーションデータを用いた検証,(4)開発手法により検出したQTLの効果の検証.今年度は,これらについて以下に記載する通り研究計画を実施した. G×Eを考慮した新規QTL検出法の開発について,作物モデルと統計遺伝学的手法を組み合わせた新規手法について,2種類のイネ栽培データ(実データ)を用いた検証を行い,有効性について確認した. 実データおよびシミュレーションデータを用いた検証に向けて,実データの整備およびデータ構造の確認を実施し,シミュレーションデータの構築に向けて準備を実施した. 開発手法により検出したQTLの効果の検証に向けて,申請者が過去に取得したイネ2系交配後代のデータを整理するとともに,交配シミュレーション用のプログラムを整備した.
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今後の研究の推進方策 |
多環境栽培データをモデルケースとした遺伝子の環境応答(G×E)を考慮したQTL検出法を開発するため,次年度は主に「(1)G×Eを考慮した新規QTL検出法の開発」について,統計的な手法をメインとした手法の開発を進める.アンバランスな栽培データをメインデータと補助データに分解して解析することを想定し,メインデータに基づき栽培地ごとのDNAマーカーの効果の推定を実施するために,補助データの統合解析から得られた各DNAマーカーに効果があると期待される確率の情報を用いることでGWASの検出力を向上させる手法を検討する.検証に用いるデータとしては,イネの多環境栽培の実データを主に利用することを想定するが,可能な限り,イネの栽培試験を模したシミュレーションデータの構築と利用を進めることで,真値のわかるデータでの検証を進められるようにする.シミュレーションデータについては,作物モデル由来と統計モデル由来の2種類のデータを用いた検証を進めることで,検証の信頼性を向上させたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は作物モデルをベースにした解析を実施したため計算容量をセーブすることができ,研究所で活用できるサーバーおよび計算用マシンを利用することで,新規の計算用デスクトップPCの利用を次年度以降に回すこととした.これにより,必要な際に最新のマシンを購入し,利用可能. 年度途中で産休・育休を取得しているため,予定していた出張を伴う研究発表を延期せざるを得なかった.また,論文掲載などの発表に係る予算の使用が次年度以降となったため.
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