研究課題/領域番号 |
23K05181
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
谷口 郁也 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 上級研究員 (20370570)
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研究分担者 |
高山 和大 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 研究員 (90884982)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | チャ / 加水分解型タンニン / テオガリン / QTL解析 / RNA-seq |
研究実績の概要 |
1. 加水分解型タンニン高含有に関与するゲノム領域の特定と選抜マーカー開発チャの加水分解型タンニン類高含有に関与するゲノム領域について、「茶中間母本農6号」(タリエンシスとチャのF1世代)と「おくはるか」(緑茶用品種)を交雑親とする分離集団(n=92)を用いてQTL解析を行った。すでに検出している第8染色体上の加水分解型タンニン類高含有QTLの領域内で組換えの起きている個体を獲得し、候補遺伝子領域の絞り込みが進展した。また、QTL解析の結果、第5染色体にもテオガリン含量に関与するQTLを検出した。第8染色体上のQTLはタリエンシス型のアリルが高含有性だが、第5染色体上のQTLではチャ型のアリルが高含有性を示し、またこれらの間にはエピスタシス効果が認められた。新たに見つかった第5染色体のQTLについては、遺伝的効果の詳細な解析が必要であると考えられた。 2.加水分解型タンニン高含有に関与する候補遺伝子の探索と機能解析 「さえあかり」(緑茶用品種)と「MK5601」を交雑親とする分離集団のうち加水分解型タンニン類含量に差がみられた個体と親品種に対してRNA-seq解析を実施した。加水分解型タンニン類高含有・低含有個体群間、親品種間での比較解析からそれぞれ発現変動遺伝子を抽出し、二群間で共通して発現変化が認められた遺伝子を候補遺伝子としてリストアップした。第8染色体上の絞り込んだQTL領域内には366個の遺伝子が存在するが、そのうち3個の候補遺伝子を見出した。この中に、タンニン類合成に関係する酵素活性を有する遺伝子は存在しなかったが、転写因子等が代謝を調節している可能性もあり、今後アンチセンスオリゴアッセイで機能を確認する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、まず、「茶中間母本農6号」(タリエンシスとチャのF1世代)と「おくはるか」(緑茶用品種)を交雑親とする分離集団を用いて行ったQTL解析により新たに第5染色体にQTLを見出し、すでに見出していた第8染色体のQTLとの間にはエピスタシスがあることを明らかにした。また、第8染色体のQTL領域については本年度の解析に用いた集団で新たな組み換え個体を獲得しており、これを用いてQTL領域の絞り込みを進展させることができた。一方、加水分解型タンニン高含有の原因遺伝子の候補探索については、「さえあかり」(緑茶用品種)と「MK5601」を交雑親とする分離集団を、加水分解含有量の高低によって2群に分けて実施したRNA-seq解析により第8染色体のQTL領域に候補遺伝子を3個見出した。これらの通り研究はおおむね計画通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
加水分解型タンニン高含有については第5染色体と第8染色体のQTLについて詳細マッピングを進めて領域を絞り込み、育種選抜に利用可能なDNAマーカーの開発を進める。また、これらのQTL領域のハプロタイプ構成と加水分解型タンニンやカテキン類の含有量との関係性を調査し、各QTLの機能を推定する。さらに、参照ゲノム情報やRNA-seq解析の情報を活用しつつ、アンチセンスオリゴアッセイを実施し、QTL領域に含まれる遺伝子から加水分解型タンニン高含有の原因となる遺伝子の候補を絞り込んでいく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度に実施したQTL解析とRNA-seq解析については、DNAマーカー解析及びRNA-seq解析に必要な消耗品類等を安価に抑えて実施することができた。また研究打合せで出張を想定していたが、オンライン会議等を活用して研究の進捗管理や情報交換を行ったため、旅費の使用がなかった。そのためこれら執行予定額分は次年度に執行予定とする。
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