研究課題/領域番号 |
23K05187
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
荒木 卓哉 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (10363326)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ハダカムギ / 硝子率 / 晩播 / 窒素分施 / 収量 |
研究実績の概要 |
採択1年目は,硝子質粒の発生機作について栽培圃場および細胞レベルで解析を行うとともに,遅まきにおける高位安定収量を実現するための窒素分施体系について検討した. 硝子質粒は開花の遅い分げつから多く発生した.水噴霧処理はそのタイミングにより硝子率への影響が異なり,子実含水率が高い開花後35日では子実は硝子質粒となったが,子実含水率が20%以下となった開花後40日以降は,噴霧により子実が粉状質化し,硝子率は低下した.したがって,開花の遅れに伴い降雨時の含水率が高く,粉状質化しなかった子実が硝子質粒になると推察された.成熟期の硝子質胚乳は粉状質胚乳と比較して,デンプン粒の占有比率に違いは見られなかったが,タンパク質の占有比率が高く,空隙率は低かった.また,登熟期におけるタンパク質の占有比率と,成熟期におけるタンパク質の占有比率との間には正の相関関係が認められた.したがって,登熟期のタンパク質蓄積量が少ない胚乳細胞は,吸水により空隙を生じ粉状質胚乳を形成するが,タンパク質の蓄積量が多い細胞は,空隙を生じにくいために硝子質胚乳を形成すると推察され,タンパク質含有率が高い子実ほど降雨後に半硝子質粒になると考えられた. 晩播は,播種量を増やした11 g区および分げつ期の重点施用に追肥量を増やした中間区において,穂数の増加は認められなかった.穂肥を重点施用した穂肥区では,穂数の増加が認められたが,細麦率が高くなったため,収量増加は認められなかった.実肥施用による穂数への影響はみられず,実肥区および無穂肥区では,細麦率は抑制されため,収量は標播と同程度もしくはやや上回った.これらのことから,出現が不規則な鞘葉分げつおよび出現の遅い高位節分げつの成長に伴うによる収量性改善の向上の可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,個体あたりの分げつを抑制し,穂数を少なくする草型改善を行うことで,開花期間を短縮させて,硝子率を低くかつばらつきを小さくすることである.また,この草型改善に付随して,高収量安定生産のための新たな栽培技術も併せて提案することである.採択1年目において,硝子質粒になりやすい条件として,開花からの経過時間が関係していること,成熟時期直前の子実含水率が低下していること,子実タンパク質含有率が高いことを明らかにした.これらの成果は,研究計画通りに実施した成果である順調に進んでいるものである. また,遅まきの高位安定収量に関する栽培技術については,研究計画に従って,異なる窒素分施体系と異なる播種量を組み合わせた条件を設けて実施ししており,今後の件きゅを展開するための重要な成果を得られていることから,順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,圃場において試験栽培した実験材料を用いての研究である.圃場試験は,作期ごとの気象条件の違いを考慮に入れた解析が重要であることから,少なくても2回は繰り返し実施する必要がある.そので,採択2年目は1年目と同様の試験区を設け,年次変動を考慮して解析を進めたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が拠点としている地域におけるムギ類の作期は,11月中旬から5月中旬であり,本研究課題においては収穫期が6月上旬になる処理区もある.4月以降の栽培管理および収穫後の調査は次年度となるため,これらに必要な予算を次年度に執行することが円滑な研究の遂行につながると判断した.これらの予算を用いて収量調査用の消耗品(篩,封筒,ストッカー等)を購入する予定である.
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