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2023 年度 実施状況報告書

植物病原菌染色体はフィールドでどのように変化し、病原性進化に貢献しうるのか?

研究課題

研究課題/領域番号 23K05235
研究機関帯広畜産大学

研究代表者

中馬 いづみ  帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (90628926)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワードPyricularia oryzae / Avena pathotype / エンバクいもち病菌 / セイヨウチャヒキいもち病菌 / Oryza pathotype / イネいもち病菌
研究実績の概要

いもち病菌のフィールドにおける病原性進化について、病原性の現象面での基礎データを固めた。
[モデル系1:エンバク菌]申請書に記載していた使用予定菌株は、ブラジル産Br58、北海道(函館市)産Ast1、茨城産4-1の3つの地域の菌であった。2023年9月、北海道十勝地域で栽培されたAvena属の緑肥であるセイヨウチャヒキ(Avena strigosa)に、いもち病が大発生した。本研究では、十勝全域から菌の分離を試み、その菌を新たに供試することとした。分離菌は十勝全域と後志地域、オホーツク地域から計117菌株を得た。multilocus系統解析と代表菌株の接種試験により、これらの菌は、Br58、Ast1と同系統のAvena patyotypeの菌であると考えられた。一方、Br58、Ast1、4-1をエンバク約100品種とそれ以外のAvena属植物約20系統に対し接種試験を行ったところ、Avena属には4-1に対する抵抗性、Br58に対する抵抗性、Ast1に対する抵抗性を示す少なくとも3つの抵抗性遺伝子が存在することが判明した。
[モデル系2:イネ菌]イネいもち病菌第7染色体のAVR-Piztに関して、正常型菌と大規模欠失菌の病原性を比較し、以前確認していた病原性変化が、菌の生育能の低下等に基づくものではなく、病原力低下によるものであることを確認した。培養下でのコロニー形成(菌糸伸長)は正常型の菌と欠失型の菌の間に有意な差はななかった。病斑面積によって病原力を評価すると、欠失型の菌には、すべてのPyricularia oryzaeに強い感受性を持つオオムギ品種Nigrateに対して、病原力を低下させた菌(半数以上)と低下させなかった菌が存在することが判明したが、北海道産の感受性イネ品種北海112号に対しては、病原性を大幅に低下させた菌が大半を占めることが判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

十勝地域にセイヨウチャヒキいもち病が大発生したため、地域の問題解決のために菌を分離し、病原体の性状を調査したため、他の実験(特にPFGE解析)に遅れが生じた。しかしながら、これらの菌の発生源がおそらく海外で、これまでに使用してきた菌株と同系統であったことが判明した。それにより、単一起源の菌のゲノムが数十年の間にどのように変異したかを知るための大きな手がかりを得たと考えている。

今後の研究の推進方策

[モデル系1:エンバク菌]十勝の菌の全ゲノム解析と、他の菌とのゲノムの比較を行うとともに、PFGE解析による染色体サイズおよびミニクロの有無の比較を行う。これにより、病原体の起源と、それぞれの菌が地理的に隔離されていた期間に生じた小規模な病原性や染色体構造の変異を調査する。
[モデル系2:イネ菌]欠失菌の病原力の低下が、オオムギ品種Nigrateに対しての病原力低下と、イネ品種北海112号に対する低下であることが判明した。このイネに対する病原力低下が、北海道品種に対するものであるか、あるいは、欠失菌が多く分離された熱帯イネに対するものであるかを比較する必要がある。今年度は、申請時の予定を少し変更し、欠失菌および非欠失菌を用いた、熱帯イネ、温帯イネ、北海道イネに対する病原力の差異を評価する。それにより、いもち病菌の宿主への適応機構とその生態学的意義を考察する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Differences in the transcriptional immune response to Albugo candida between white rust resistant and susceptible cultivars in Brassica rapa L.2023

    • 著者名/発表者名
      Miyaji Naomi、Akter Mst. Arjina、Shimizu Motoki、Mehraj Hasan、Doullah Md Asad-Ud、Dennis Elizabeth S.、Chuma Izumi、Fujimoto Ryo
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 13 ページ: -

    • DOI

      10.1038/s41598-023-35205-5

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Disentangling the complex gene interaction networks between rice and the blast fungus identifies a new pathogen effector2023

    • 著者名/発表者名
      Sugihara Yu、Abe Yoshiko、Takagi Hiroki、et al.
    • 雑誌名

      PLOS Biology

      巻: 21 ページ: e3001945

    • DOI

      10.1371/journal.pbio.3001945

    • 査読あり
  • [学会発表] いもち病菌Pyricularia oryzaeに属する2系統のAvena分離菌のAvena属植物に対する病原性パターンの比較2023

    • 著者名/発表者名
      保科萌,中馬いづみ
    • 学会等名
      令和6年度日本植物病理学会大会
  • [学会発表] 北海道十勝地域で発生したセイヨウチャヒキいもち病およびエンバクいもち病2023

    • 著者名/発表者名
      中馬いづみ,天間館貴子
    • 学会等名
      令和6年度日本植物病理学会大会

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公開日: 2024-12-25  

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