研究課題/領域番号 |
23K05263
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
香取 郁夫 近畿大学, 農学部, 准教授 (00319659)
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研究分担者 |
土原 和子 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (10300823)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 頭部突起 / アサギマダラ幼虫 / 背面全体を覆う肉状突起 / ジャコウアゲハ幼虫 |
研究実績の概要 |
本研究ではチョウ目幼虫の多様な形態の中でも、とくに体表にもつ顕著な突起に注目した。そして突起の生える位置や生え方により異なる役割が存在するとする仮説を立て、検証を試みた。役割の解明を目指す突起は次の3タイプである:1)頭部突起、2)尾部突起、3)背面全体を覆う肉状突起。 1)「頭部突起」に関して、アサギマダラ幼虫の柔らかい頭部突起は「食草上での葉の探索に補助的に使う」という仮説の検証を試みた。「食草と非食草の探索実験」より、視覚と頭部突起の両方が植物体の探索に役立つこと、頭部突起では食草と非食草を区別できない、つまり頭部突起で食草の接触化学物質は感知していない可能性が高いことが分かった。また、「Y字管オルファクトメーターを用いた匂いの選択試験」より、頭部突起に食草の匂いを感知する能力は無いことが分かった。さらに、「食草上における葉の探索実験」より、頭部突起が食草の葉の発見に役立つことが分かった。さらに「SEMを用いた突起の構造観察」により、突起表面に感覚子と見られる長い毛がまばらに生えていることを確認できたが、この感覚子は形態的特性から機械感覚子であると推定された。以上から、アサギマダラ幼虫の持つ柔らかい頭部突起は、何かに触れたという物理刺激に反応する器官であると考えられる。ただしその主要な使い方は、食草の大きさと形態から考えて、食草探索に用いるというより、食草上で新しい葉を探索するときに用いると考えられる。つまり本種幼虫の頭部突起の役割に関して「食草上における葉の探索」仮説が支持された。 2)「尾部突起」に関して、令和5年度は目立った実験を行わなかった。 3)「背面全体を覆う肉状突起」に関して、ジャコウアゲハの幼虫の背面全体を覆う多数の肉状突起は、同種他個体による共食いからの防衛に役立つとする「共食いからの防衛」仮説を掲げ、検証実験を行い、現在この実験は進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験用の昆虫を概ね十分数確保できたため。また事前に立てた仮説から予測された結果が出たため。
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今後の研究の推進方策 |
アサギマダラ幼虫の柔らかい頭部突起の役目に関する「食草の葉の探索補助」仮説の検証は期待通りの結果を得て完了した。今後は主要な実験をジャコウアゲハ幼虫に移し、ジャコウアゲハ幼虫が背面全体にもつ肉状突起の役目に関する「同種他個体による共食いからの防衛」仮説の検証に注力する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験昆虫飼育のための食草栽培や畑の管理に必要な培養土の購入などが当初の想定より少なく済んだため。 実験や調査の補助、実験データの解析を行うためのアルバイト代、分担研究者との打ち合わせや情報交換のための旅費を十分に盛り込み研究活動を活発化する。
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