研究課題/領域番号 |
23K05291
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
日野 輝明 名城大学, 農学部, 教授 (80212166)
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研究分担者 |
橋本 啓史 名城大学, 農学部, 准教授 (30434616)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 河川敷 / アカネズミ / 遺伝的多様性 / 生息地分断 / コリドー |
研究実績の概要 |
河川沿いの緑地は多くの都市に生息する野生生物にとって繁殖や移動を行うための重要な場所であるが、近年の開発によって個体群の分断・孤立が進んでいる。本研究の目的は、名古屋市内を流れる庄内川と矢田川の河川敷に生息するアカネズミApodemus speciosusの遺伝子解析を行い周辺環境との関係を分析することで、個体群の河川による分断と河川敷による連結を総合的に評価することである。 個体群間の遺伝的距離は地理的距離とは関係がなく、遺伝的多様性は上流地点の個体群ほど高かったことから、東側の森林地帯との遺伝的なつながりが明らかになった。個体群の遺伝的多様性に影響する要因として、周辺域の土地利用カテゴリー(市街地・農地草地・樹林地)、河川の違い、東経との関係を一般化線型モデルによるモデル選択を行った。アカネズミの移動範囲を評価するために5タイプのバッファサイズ(半径1-5㎞)、河川による分断を評価するために対岸の有無の異なる2タイプのバッファ範囲、都市化の度合いの違いを評価するために2タイプの土地利用図(1978年と2008年)を用いた合計20タイプのモデルを作成して最良AICを比較した。 その結果、対岸を含む場合は2~3㎞以内の樹林地による正の効果、対岸を含まない場合は2~3㎞以内の市街地と農地草地による負の効果が示された。これらの結果から、分断した環境でのアカネズミの最大移動範囲は2~3㎞であると推測されること、対岸への移動が不可能な場合には市街地と農地・草地増加による移動制限によって遺伝的多様性が減少すること、対岸への移動が可能な場合には樹林地が増加すると遺伝的多様性が増加することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
河川敷の調査については予定通りにアカネズミの遺伝的分析を行ない、周辺環境要因とのの関係の分析によって分断と連結の効果を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
予定では河川敷周辺緑地においてアカネズミの遺伝的分析を行う予定であったが、予備調査の結果、実施困難であることが予想された。そこで、次年度はドライブウェイによる遺伝的分断の効果を明らかにすることを目的にした研究に変更する。 調査地はニホンジカによる森林衰退が問題となっており、研究代表者が長年にわたって調査を行ってきた奈良県大台ヶ原である。ここではアカネズミ以外にヒメネズミ、スミスネズミも生息しており、種間の違いを明らかにすることができる。またドライブウェイを挟んだ両側でニホンジカによる下層植生の影響の違いがあることから地点間比較によりニホンジカによる影響を明らかにすることができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度途中で予算不足が予想されたので100万円を次年度予算から移したが、実際には30万円程度の使用で収まったため、約70万円の予算が繰越になった。次年度は予定通りに予算を使用する予定である。
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