研究課題/領域番号 |
23K05299
|
研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
小栗 恵美子 東京都立大学, 理学研究科, 客員研究員 (10608954)
|
研究分担者 |
江口 克之 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (30523419)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 生物多様性 / ベトナム / 山地照葉樹林 / 土壌動物 |
研究実績の概要 |
江口と現地協力機関であるベトナム生態学生物資源研究所(IEBR)の研究者らは、土壌動物を網羅的に集める方法として、2023年9月にベトナム中部のGia Lai省のKon Ka Kinh国立公園、Kon Chu Rang自然保護区にて、ハンドシフティング法とツルグレン装置抽出法を実践した。雨季であったため土壌水分量が極めて高く、土壌動物の分離が困難であった。そこで、採集方法を修正した。(1) ツルグレン装置抽出法を採用する。また、高湿条件では個体数を優占度の指標として用いにくいため、1つの植生プロットあたり10基の装置を用いることで、個体数だけではなく出現頻度(10基のうち何基で出現したか)のデータも取得する。(2) 高湿な土壌からも比較的分離しやすいクモ類、多足類、等脚類、甲虫類を対象とする。(3) IEBRからの助言を受けて、ベトナム中部が雨期の時期にも天候が比較的安定しており、ハノイからのアクセスも良いベトナム北部に代替の調査地を複数追加設定する。 以上をふまえて、2024年3月に、ベトナム北部のCat Ba国立公園(Hai Phong省)とXuan Son国立公園(Phu Tho省)で調査を実施し、比較的良好な定量的・網羅的サンプルを収集した。 土壌動物の分類については、属以上の高次の同定は形態で、暫定種へのソートはミトコンドリアCOI遺伝子をマーカーとするアンプリコンシーケンスを用いて行う計画である。小栗は、研究協力者のBallarin氏の協力を受け、MinIONを行うために必要な、実験設備の調査、及びプロトコル作成と必要物品のリスト化を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り、1回目の野外調査が雨期の影響を強く受け、良好なデータが得られなかった。そのため、採集方法を一部改めるとともに、ベトナム北部に代替の調査地を追加設定した。その結果、2024年3月にはベトナム北部のCat Ba国立公園とXuan Son国立公園で調査を実施し、比較的良好な定量的・網羅的サンプルを収集できた。また、ツルグレン装置を20基作成し、IEBRに預け、その使用方法をIEBRの研究者に習得してもらった。これによって、IEBRの研究者に、最適な時期に特定の調査地でのバックアップ調査を依頼できる体制が整った。 現在、2024年3月のサンプルのソーティング作業に取り掛かったところであるが、その後の分類作業の核となるMinIONを用いたアンプリコンシーケンスの準備も進めており、このサンプルを用いたテストランを9月に行うことを目指している。 2023年度に得られた、ツルグレン装置抽出法のサンプルや、補完的調査法(目視探索・採集やハンドソーティング)のサンプルの中に、分類学的新知見を伴う標本も散見されており、確定できたものから、系統分類学的論文として発表していく予定である。 よって、本研究は概ね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年8月あるいは9月に、研究代表者及びIEBRの研究者が中心となって、土壌動物のツルグレン装置抽出法によるサンプリングが完了しているCat Ba国立公園とXuan Son国立公園の5 m X 100 mプロット(各2プロット)において、後追いで、植生調査を行う。一方で、Kon Ka Kinh国立公園とKon Chu Rang自然保護区の植生調査が完了しているプロット(各2プロット)については、天候の安定した時期(6月、7月あるいは11月を予定)にIEBRの研究者にバックアップ調査を実施してもらう。 植生調査によって得られた植物標本は形態、および必要に応じてDNA barcodingによって種同定を行う。 2024年3月の土壌動物のサンプルを対象としたMinIONシーケンス(アンプリコンシーケンス)を9月をめどに実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2023年9月のベトナム中部における野外調査では、雨期の影響を強く受けたため、良好なデータが得られなかった。そのため、採集方法と調査地の追加設定を検討した。その結果、2024年3月にはベトナム北部のCat Ba国立公園とXuan Son国立公園で調査を実施し、比較的良好な定量的・網羅的サンプルを収集できた。24年度はベトナム北部で植生調査を行うため、その調査費用として次年度使用額が生じた。
|