研究課題/領域番号 |
23K05312
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
下鶴 倫人 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (50507168)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ヒグマ / 採餌生態 / バイオロギング |
研究実績の概要 |
本研究は、春から夏のヒグマの土地利用、採食生態、生理状態を個体レベルで解析することにより、どのように食物欠乏期を乗り切っているのかを、カメラ付きGPS首輪(3軸加速度付き)や心拍・体温計測ロガーを用いて明らかにすることを目的とする。知床半島国立公園内の調査地に生息する成獣メスに着目し、子の有無による行動生態の違いや、主要食物の欠乏期にどのような応答を見せるのか、その詳細を明らかにすることを試みる。 2023年度は、8月に3頭の成獣メスにカメラ付きGPS首輪および心拍・体温計測ロガーを装着し、行動および生理状態の追跡を行った。調査地で採取したヒグマの糞の内容物を分析した結果、8月から11月までのヒグマの主要食物である、ハイマツ球果・サケ科魚類(カラフトマスおよびシロザケ)・堅果類(ドングリなど)などの高カロリーな食物資源を採食する機会が非常に少なかったことが明らかとなった。これらの主要食物資源の欠乏により、知床半島では9月から10月にかけて多くのヒグマが人里近くに接近し捕殺されるという、大量出没が生じた。首輪を装着した3頭のうち2頭は、10月に本来の行動圏を大きく離れ移動し、結果として市街地近くで捕殺となった。このように、本年度の研究より、主要食物の欠乏がヒグマの行動に大きな影響を与えることが明らかとなった。現在、2頭の首輪から得られた3軸加速度データ、および心拍・体温データの解析中である。このほか、食性解析に用いる体毛を非侵襲的手法により収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定とほぼ同じ3頭のヒグマの生体捕獲に成功した。また、2023年が顕著な食物不足年となったことにより、食物の欠乏期における行動変容に関するデータを得ることができたのは大きな進歩であるといえる。しかし、3頭中2頭については、データの取得期間が2月程度と制限されてしまったことが課題である。一方、食性解析においては、十分な数の糞を採取し、当初の予定通り、食物資源の量や季節変化を評価することができた。また、食性解析に供試する体毛の収集も予定通り行うことができた。これらを総合し、研究は概ね順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度はより多くの個体から、より長い期間のデータを得ることを目的とし、ヒグマの生態捕獲を6月と8月の2回に分けて実施する。また一部の個体より、カメラデータや3軸加速度データ、心拍・体温データを回収し、解析を進めていく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
カメラ付きGPS首輪の購入について、捕獲機会が限られたため、当初の予定より購入数が下回った。このため次年度以降の首輪購入代として使用することとした。
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