研究課題/領域番号 |
23K05322
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
安田 幸生 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (50353892)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 森林風害 / 台風 / 気象害 / 危険度評価 |
研究実績の概要 |
令和元年房総半島台風(2019年台風15号)により千葉県内の森林において大きな被害が発生した。森林総合研究所は千葉県森林研究所と共同で千葉県山武市と君津市内の被災森林において現地調査を行った。その結果、風害による被害は局所的であることが多く、まずは現地で当時どのような風が吹いていたかを知ることが被害の要因把握のために必要だと考えた。気象庁が公開しているメソ数値予報モデル格子データ(MSM、5km格子)では台風上陸の際の千葉県内の風速分布が十分に表せていないと思われ、本研究においては、領域気象モデルであるWRF (Weather Research and Forecasting) モデルを用いて風速分布推定を試みた。 WRFによる千葉県とその周辺域を対象とした水平解像度500 m の風速計算により、詳細な風速分布推定が可能となった。台風接近から通過後(2019年9月8日21時から9日9時までの12時間)にかけての最大風速の分布では、最大風速20m/sを超える強風域が沿岸部だけでなく内陸部にも出現しており、千葉県北東部や房総半島において顕著であった。実際の森林被害は北東部の山武市周辺から君津・富津市を結ぶラインおよび房総半島南部において多かったが、被害箇所と風速分布を重ねてみると、それらが必ずしも一致しなかった。これは森林被害の有無やその規模は地上風速の大小だけでは決まらないことを示している。そこで、上空(地上200m)と(地上10m)の風速差を調べてみると、被害の多かった地域とこの風速差が大きい範囲が重なることが多いことがわかった。森林風害の発生には、地上風速のほかに、地上と上空との風速差が強く関連していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
台風による森林風害の危険度評価のために、数値計算による台風シミュレーションを行う必要があるが、計算用ワークステーションの初期不良が発覚し、シミュレーションの準備作業に遅れが生じた。現在は、台風シミュレーションを行う計算環境の整備は終了し、計算の初期値や領域設定などを改良しながら、最適な計算手法を検討している段階にあり、当初の遅れを取り戻しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、令和元年房総半島台風を事例として台風上陸時の山地複雑地形における風速分布を、領域気象モデル(WRFモデル)を用いて詳細に推定し、風害発生の要因となる気象条件を明らかにする。とくに上空の地上の風速差に着目して、森林被害発生との関連を調査する。また、千葉県内の被災森林において実施した毎木調査データの解析を行い、被害林分の特徴と被害程度の関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
電子計算機の納品価格が予定価格よりも安かったため、次年度使用額が生じた。令和6年度は、調査および学会参加旅費、データ解析や現地調査に用いる消耗品費、論文投稿料の支出を予定している。
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