研究課題/領域番号 |
23K05329
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
羽生 直人 宇都宮大学, 農学部, 教授 (10292575)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | セロウロン酸 / グルクロナン / リアーゼ / 生分解 |
研究実績の概要 |
セルロースの生分解は,加水分解酵素であるセルラーゼによる低重合度化が広く知られている。これに対し本研究では,セルロースの第一級水酸基に,酸化酵素が反応することによって生成するカルボキシ基を含有する酸化セルロース(セロウロン酸,β-1,4-グルクロナン)を起点とし,これにリアーゼ型酵素が反応して低重合度化が進行するという,従来とは全く異なる,新たなセルロース分解経路の存在を探索することをめざす。 酸化セルロースを調製するために軟腐朽菌Humicola insolensの産生する酸化酵素(溶解性多糖モノオキシゲナーゼ(LPMO))を異種発現によって調製し,セルロースを処理した。得られた試料を,セロウロン酸分解菌Brevundimonas 属細菌SH203株の産生するセロウロン酸リアーゼ(CUL-I)で分解反応を行ったが,顕著な分解活性は認められなかった。この理由として,CUL-Iは,C6位が均一な構造を有するセロウロン酸に対する基質特異性が高いため,比較的不均一なカルボキシ基の分布を持つと予想される酸化セルロースに対しては反応性が低い可能性が考えられた。そこで,酸化セルロース分解活性を有する新たな菌株の探索に着手した。現在までに,セロウロン酸分解菌として,Sphingobacterium sp. 細菌KKH451株が土壌より単離されている。本株はこれまでに知られているセロウロン酸リアーゼとは異なるユニークな性質を持つことが示唆されたため,現在その詳細を明らかにする検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,異種発現によって得られた軟腐朽菌Humicola insolensの酸化酵素を用いて酸化セルロースを調製し,当研究室で保有するセロウロン酸リアーゼによる分解性の評価を行うことができた。顕著な分解活性は認められなかったが,これは想定内のことであり,予定通り新たなセロウロン酸分解菌の探索に着手し,これまでにない性質を持つ酵素を産生する新規セロウロン酸分解菌の単離に成功した。 これらのことからおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
新たなセロウロン酸分解菌として単離することができたSphingobacterium sp. KKH451株の性質を中心に検討を進めていきたいと考えている。本菌株が産生するセロウロン酸分解酵素をはじめとする糖質分解酵素群の性質を詳細に明らかにしていく。そのため,目的酵素を各種カラムによって精製した後,その酵素をコードする遺伝子のクローニングと異種発現を行い,触媒機能を明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究室のサンプル整理を積極的に進めたため,一時的にフリーザおよびインキュベータの容量に余裕が生じた。そのため,予定していたフリーザおよびインキュベータの購入を見送ったことが,次年度への繰越しが生じた大きな理由である。次年度はサンプルが増加し,余裕が少なくなることが予想されることから,状況を見ながら適切な時期にこれらの購入を検討したい。
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