研究課題/領域番号 |
23K05345
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研究機関 | 久留米工業高等専門学校 |
研究代表者 |
青野 雄太 久留米工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (70264075)
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研究分担者 |
阪上 宏樹 九州大学, 農学研究院, 助教 (40604822)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 小形風車用ブレード / 前進翼 / 後退翼 / スギ製ブレード / CNC |
研究実績の概要 |
小形風車用ブレードとして設計した直線翼を円弧状にスイープさせた前進翼、後退翼を製作し、直線翼とともに性能試験を行った。その結果、パワー係数は直線翼のものより前進翼および後退翼の方が高くなり、特に周速比の高い側で性能向上がみられた。この実験結果を基にスギを用いた風車翼の試作を行った。翼型はEPPLER397を採用し、翼の半径方向長さ300mm、前進および後退翼は翼先端で円周方向へ90mmスイープさせた。翼先端の弦長を28㎜とし、風車設計ソフトウェアQBladeを用いて風速6m/s、周速比6で翼素理論による効率が最大となるように、半径方向の翼弦長分布を設定した。スイープ形状およびCNC加工機の作業領域を考慮して、400x240x30mmのスギをワークとした。全面曲面となっている翼形状を切削するため、翼厚方向の上面と下面とに分けて加工した。このとき、片面を加工している時点で、ワークに反りが生じる。この反りを完全に取り除くことは極めて困難であるが、十分な剛性のピンで支持することでワークを反転させた後も反りの影響を低減して加工することができた。また、性能試験時に生じるスギ製ブレードのひずみの測定についても検討した。風車翼回転時のひずみはひずみゲージをブレードに直接貼付し、スリップリングを用いてひずみ値を取得する方式とした。回転軸などを加工しひずみ測定の準備を行った。スリップリングの摩擦抵抗が意外に大きいため、スリップリング無しの通常の性能測定とスリップリングを取付けたひずみ測定の二つの測定で実稼働時のひずみを取得することにした。このスリップリングを取付けた測定では、風車を回転数制御モーターで回し、スリップリング無しのものと同じ流れを再現することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず、稼働できなかった疲労試験機の修理を行い、スギの疲労損傷について研究を行う予定であった。しかし、4月に試験機の修理に関する事務上の手続きを始めたが、手続きに時間がかかり、実際の修理に入ることが出来たのは3月中旬であった。事前に調べていた故障箇所について昨年度全ての予算を使って修理を行った。3月の修理時にさらに二か所不具合が見つかったが、この二か所は今年度の予算で修理して疲労試験を開始する。このように疲労試験機が使用できなかったため、実際の風車翼の形状に関する検討や、スギ製ブレードの製作に関する研究から始めた。
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今後の研究の推進方策 |
スギ製風車ブレードの試作を先行して行った。性能試験を実施し、稼働中にブレードに生じるひずみを測定して、疲労試験時のパラメータとして用いる。また、これまでに行った性能試験で前進翼や後退翼においてパワー係数が向上が見られた。その要因として、取付角の影響や稼働時の変形による迎角の変化が考えられる。スギ製ブレードを用いてこれらパラメータを変化させて性能試験を行い検討する。特に迎角の影響については稼働中のブレードのねじれ変形が大きくなるように設計・製作し、試験を実施する。 疲労試験については、ひずみ測定結果に基づき、ひずみをパラメータとして疲労損傷の大きい箇所を予測し損傷メカニズムの観察を行う。ブレード根元では垂直ひずみ、ブレード中央ではせん断ひずみが疲労損傷の原因として考えられる。垂直ひずみに対する試験方法は4点曲げ疲労試験が適切である。一方、迎角変化によりせん断ひずみが損傷要因となることを当初想定していなかったが、せん断ひずみに対する適切な疲労試験方法を考案する必要がある。ブレード同様にスイープした形状の試験片がせん断ひずみを与えやすいと考えられ、ひずみ解析を行って試験片を設計する。
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次年度使用額が生じた理由 |
故障していた疲労試験機の修理を行ったが、資材高騰や調達時期の遅れが生じたため、年度末に修理が実施され、予算執行が遅れた。今回の修理完了後、試運転時に見つかった不具合があり、次年度使用額はそれらの修理のために使用する。
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