研究課題/領域番号 |
23K05353
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
関 伸吾 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (20216518)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 遺伝的多様性 / 近親交配 / 種苗放流 / 淡水魚 |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアDNAをマーカーとした3魚種(ティラピア、メダカ、アマゴ)の遺伝的多様性解析において、ティラピアについては当初計画の愛知、高知、大分の標本群に加え、熊本(2標本群)、鹿児島(2標本群)、徳島の計8標本群について評価を行った。結果を過去のデータと比較したところ、予想に反しその遺伝的多様性は地域によって安定したものではなく、各標本群でニロチカ系統、モザンビカ系統の比率を年によって大きく変動させることがわかってきた。つまりこれは、その年の環境条件に応じて最良となる母系統の生残率を高めることによって、集団を安定的に維持している可能性があることを示唆している。メダカについては、高知県の10標本群および他県5標本群における遺伝的多様性を検討し、高知県において野生の近親交配系統の集団、在来のみで遺伝的多様性の高い系統の集団、外来系統の侵入により多様性の高くなった集団を把握した。現在はその継代集団の作出を行い、耐性試験に臨む予定である。アマゴについては、物部川において在来系統と思われる集団が高頻度で生息する源流域を把握するとともに、物部川の上流域と中流域では在来集団の系統が異なる可能性が示唆された。さらに、仁淀川中流域についても同様の調査を行い、仁淀川中流域における在来系統の分布を把握している。以上、遺伝的多様性の評価については、当初の計画に比べて多めの標本群を調査し、より詳細な結果を得ることができている。 形態形質については、メダカ、アマゴでは明確な違いはみられないものの、ティラピアにおいてはいくつかのティラピア系統が混在している水域の標本群および単一系統のみが生息し近親交配の影響が示唆される標本群において、左右のバランスがずれてきている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は遺伝的多様性の把握を主眼に置いて調査を進め、3魚種においてミトコンドリアDNAによる多様性評価、野生集団における近親交配系統の把握を、予定の標本群数に比べて多めに行った。これらの野生集団に存在する多様性の高い集団や近親交配系統集団は、今後、継代集団を比較するうえで効率よく活用できる有用な野生集団であるといえる。また、アマゴについては新たに仁淀川を調査地点に追加するとともに、多様性評価や在来集団の探索は予定よりも早く進行している。ただし、マイクロサテライトDNAについては、3魚種ともまだ検討を行っていない。2024年度に3魚種まとめて解析予定である。交雑や近親交配系統の影響が形態形質である左右性に影響を与える可能性についてはティラピアにおいて把握できており、次年度以降、その点に注目して研究を進める検討課題ができたといえる。一方、塩分耐性・水温耐性については予定からは遅れているが、野生集団に存在する近親交配系統集団の把握はできており、2024年度以降にそれを活用していけば、効率よく継代集団の検討が可能である。
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今後の研究の推進方策 |
塩分耐性・温度耐性については予定に比べて進行が遅れているが、その分遺伝的多様性評価は予定以上のデータを把握できている。2024年度は耐性試験およびマイクロサテライトDNA解析を追加することとなるが、それ以外は計画通り研究を進めていく予定である。また、ティラピアについては遺伝的多様性の年変動について検討を加えるため、2024年度についても高知、愛知、大分、熊本、鹿児島の5標本群で追加採集・解析の予定である。
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