研究課題/領域番号 |
23K05358
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研究機関 | 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター |
研究代表者 |
圦本 達也 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 水産領域, 主任研究員 (90372002)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | カキ / 高水温 / 低塩分 / 複合影響 |
研究実績の概要 |
近年、気候変動によると思われる高温、豪雨そして強い台風等による異常気象の発生頻度が増加している。潮間帯に生息する二枚貝類は干潮時には干出の影響を受け、環境水は塩分変化が大きい汽水域でもあるため、気候変動の影響を最も受けやすい環境で生存している。また、初夏から秋は異常気象が発生しやすく、その時期は二枚貝類も性成熟して放卵放精する時期でもあり、貝自身も体力が疲弊している。このため、二枚貝類の大量死は高水温、低塩分、再生産による疲弊と言った複合要因により発生していることが考えられる。 本研究ではそれらの複合要因がどの様に影響を及ぼし、二枚貝類を死亡させているかを明らかにするため、温度条件(通常水温・高水温)、塩分濃度(低~高の多段階)、二枚貝の成熟度(成熟・未成熟)の条件を変えた飼育実験を行い、二枚貝の生死評価と併せて生残個体へのメタボローム分析等による生理評価により複合影響の実態を明らかにする。 そこで、初年度は潮間帯域に生息することが知られるカキ類に注目し、生殖腺が未熟なマガキの稚貝と中型個体を用いた飼育実験を実施した。試験では、高水温と低塩分がカキに及ぼす複合影響を評価することとし、水温は通常水温の25℃区と高水温の35℃区の2区を設け、各種塩分(0~20PSU)の条件で曝露試験を行った。結果は、稚貝と中型の大きさに関わらず、25℃区では何れの塩分条件でも死亡個体が発生しない曝露日数であっても、35℃区では10PSU以下の低塩分区で死亡個体の発生が見られた。このことは、生殖腺が未成熟な個体であっても高水温と低塩分が複合した場合、カキは生存に対してより深刻な影響を受けることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は生殖腺が未発達なカキへの高水温・低塩分の複合影響を明らかにするための、暴露実験を実施した。2024年度は性成熟したカキを用いた同様の実験を行い、両年度で得られた供試カキについてのメタボローム分析を進める。
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今後の研究の推進方策 |
生殖腺が成熟したカキを用いる曝露試験は、適切な状態のカキを入手できる季節が限定される。現在、成熟したカキを用いた曝露実験を進めているところであり、同実験が完了した時点で、冷凍保管される両年度の供試カキについてメタボローム分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額の10-20%は物品費(実験試料、餌、試薬等)に用いる。残りの予算は外注分析を予定するメタボローム分析費に用いる。
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